「静かな夜のビーチのように、波が打ち寄せてくる作品。」ムーンライト ぽぽさんの映画レビュー(感想・評価)
静かな夜のビーチのように、波が打ち寄せてくる作品。
「黒人はどこにでも行ける」。
ラストでシャロンがレストランのドアをじっと見つめる意味深なシーン、かつてフアンに言われたこの言葉がよみがえっていたに違いない。
レストランというのも大事なポイント。フアン、テレサ、ケヴィン。シャロンに食事を提供してくれるこの3人が、シャロンが心を許す数少ない人物である。
フアンがシャロンに水泳を教えるシーンでは、美しい映像で深い意味合いを伝えてくれている。アメリカでは、黒人は泳げる人が少なく水難事故に遭いやすいことが社会問題となっている。つまりフアンには、シャロンの命を守りたいという父性まで芽生えているのだ。また、「黒人はどこにでも行ける」というセリフにもつながってくる。昔は海もプールも差別で入れなかったがそれは大きな誤りで、黒人はどこにでも行けるのだ。
「月明りに照らされ黒人の子供が青く見える」という表現も、何とも詩的だ。シャロンとケヴィンが結ばれたのも、月明りに照らされたビーチ。フアンとの思い出の場所でもある。セリフが限られている分、全てのセリフが良い。
海が特別美しい街なんだろう…一体、どこ?と調べると、マイアミが舞台の物語だった。なるほど、だから登場人物がほぼ黒人なのね。ざっと観た感じ、白人っぽかったのは、ドラッグ更生施設にいたエキストラのかなりボンヤリ映る後ろ姿くらい。恐らく施設職員なんだろうけど…富裕層の白人はクスリ漬けになったりしない土地なんだろうね…。
人種、貧困、LGBT…あらゆる問題を抒情的に、幻想的に描いた作品だった。
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