「SFって、やっぱり難しい」散歩する侵略者 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
SFって、やっぱり難しい
2017年 日本のSF作品
テーマは「愛」だろう。
ただその愛は必ずしも普遍的概念ではなく、「日本人が考える愛」になっている。
人間の持つ「概念」を奪うことで人間というものを知ろうとする宇宙人
彼らの目的は「侵略」
概念を奪われた人間は、その概念がすっぽりと抜け落ちてしまう。
地球に到着した宇宙人は3名
それぞれ概念を奪いながら3人がその概念を一つにして「侵略」するのが目的。
しかし、
人間を侵略したいのか地球を侵略したいのか?
地球を侵略する場合、一気に人類を殺害してしまえば済む。
実際火の玉のような攻撃を加え始めた。
人間の概念を奪うことでその人から概念が抜け落ちるのは、宇宙人にもわからなかったこと。
人間というものを理解すると同時に人類を攻撃できる理由が分からない。
人間の概念を奪う目的が侵略とどのようにつながるのかいまひとつわからなかった。
さて、
2017年 この時代はまだ日本のSFの概念がこのあたりにあることが伺える。
すでに古いとしか言えない。
この点が残念だった。
ただ、
なぜ宇宙人が攻撃をやめたのかを明確にしなかった点は良かった。
描けばしつこくなる。同時につまらなくなる。
逆に、
宇宙人は最初どのように人間の脳に寄生したのかを描いてほしかった。
「2か月後」のシーンで、ラボの小泉今日子さんが「ナルミさんの症状だけ事例がない」というようなことを言う。
しかし、ホテルでナルミはシンジに「私から愛を奪って 愛はなくならない」とも言っている。
ここに統一性がなくSFとしての描き方にブレがある。
実際ナルミは愛を奪われた。
しかし、その代わり人類は助かった。
「人類が抱えてきた山のような問題を一から考え直すことができた」
それは愛という代償の産物だったのか?
「愛と犠牲」
この概念が抜けきっていない、時代。
2005年の映画「宇宙戦争」
あれよあれよという間に侵略される地球
人間と水が食料
しかし、細菌や微生物によって侵略を断念した宇宙人
この緊迫さとリアルさが欲しかった。
全体的に面白いものの、SFとしての設定のブレはあってはならない。
だからSFは難しい。
「愛」
そしてシンジは最後に言う。
「ずっとそばにいるよ 最後まで」
表現的にも非常にわかりやすい。
しかし愛は奪うことなどできないということを描くことで、この作品はめちゃくちゃよくなったと思う。
プロットはしっかりしていたので惜しかった。
最後にどうしても日本人的な概念を持ってきたかったのだろうが……
R41さん、コメントありがとうございます。
黒沢清監督にかかればSF映画だって文学的になってしまう・・・というか、黒沢監督に対する苦手意識が増大してしまいました。
いい映画もあるんですけどね~