「GPS装置を渡すなんて卑怯ですね。卑怯だろ~?」散歩する侵略者 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
GPS装置を渡すなんて卑怯ですね。卑怯だろ~?
もしかすると、筋肉ムキムキの笹野高史が飛び出してくるんじゃないかと妄想してしまうが、それよりも厚生労働省って肩書がいかにも卑怯だろ~って思ってしまう。どうして厚生労働省なのか、どうして謎のパンデミックが起こっていたのか、宇宙人による侵略がメインテーマであるハズなのに、一方では自衛隊も出動していて、戦争が今にも始まろうとしているという展開に納得がいかない。
本作は黒沢清監督のオリジナル脚本ではなく、前川知大という原作者がいて、元は舞台劇であるのだという。前川原作の『太陽(2015)』でも独特のSF世界観を発揮していたのですが、どちらも舞台劇ぽい狭い範囲での設定です。黒沢清の映画なのだから、誰かが幽霊なんだろう!と勝手な先入観で見ていると裏切られてしまいます。
基本的には人間の体を乗っ取った3人の宇宙人が中心。加瀬鳴海(長澤まさみ)の元に戻ってきた夫・真治(松田龍平)。青年・天野(高杉真宙)、女子高生あきら(恒松祐里)だ。宇宙人は人間の概念を奪い、知識を蓄えていく。れは「家族」であったり「仕事」であったり、抽象的な概念なのだ。概念を奪われた人間はその部分が欠落して痴呆化してしまうようだ。医者から若年性アルツハイマーの疑いを持たれるほど知識不足だった真治たち宇宙人は徐々に人間を理解していくのです。
真治のガイドとして運命を共にする鳴海、天野のガイドとして行動するジャーナリストの桜井(長谷川博己)は概念を奪われないという設定。やがて3人の宇宙人は仲間に通信機で交信し、地球を侵略し始めようとしている。命が惜しくなった桜井はわずかな生き残りの“サンプル”になることを希望し、彼らに協力してしまう。一方、鳴海は真治と一緒にいたいと切望する・・・
結局は「愛が人類を救う」という壮大なテーマではあったものの、戦争が始まるとは何のことだったのか、笹野高史は何だったのかと、大きな謎も残したままエンディングを迎えます。「人類すげーな」とか「人類をなめんなよ」とか、やたらと“人類”を強調していたこともクスッと笑えてしまう作品でした。
【2017年9月映画館にて】
いつもありがとうございます。
kossyさんのおっしゃる通り、非常に評価が難しかったです。
日本のSFは未だ弱いと思います。
設定のブレも相当ありました。
今後に期待したいです。