「愛は人類を救えるか?」散歩する侵略者 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
愛は人類を救えるか?
レンタルDVDで鑑賞。
タイトルを聞いただけで体がゾクッとしました。特撮ファンの琴線に触れて来て、観たかった映画のひとつでした。
地球は狙われている。静かに、しかし着実に!
日常の中に非日常が溶け込んでいく様が秀逸でした。
じわじわ侵食されていき、いつの間にか取り込まれてしまうような緊張感が堪りませんでした。それに、概念を奪うだなんて最強の侵略方法だなと思いました。指針を失うと全てが崩れてしまいますからねぇ…。あな恐ろしや…
概念を奪われた人たちの大半は自分を見失い、精神に支障を来してしまいましたが、一部の人間は凝り固まった考えから解き放たれ、新たな視点を獲得していました。常識・慣習とはなんぞやと、突き付けられた感じでした。
スリルとサスペンスを徐々に高めながら、テンションを最後まで持続させた演出手腕が素晴らしかったです。
さすが黒沢清監督、ホラーの名手だな、と…。
しかし、ユーモラスな場面もあって、侵略者なのに憎めないキャラクターになっているのも上手いなと思いました。
地球人を理解するために概念を採集していく彼らでしたが、愛の疑問にぶつかった真治(松田龍平)と、その概念を授ける妻の鳴海(長澤まさみ)とのやり取りが響きました。相手を愛し慈しむこと…。それを知った侵略者たちは、我々のことを理解して、愛してくれたと云うことなのか?
[余談]
松田龍平の、飄々と捉えどころの無い感じの演技が絶品でした。周囲に静かに不協和音を撒き散らしながら、来る日も来る日も散歩、散歩…。こう云う類の役をやらせたら彼の右に出る者はいないんじゃないかなと改めて思いました。
※修正(2022/03/27)
松田と長澤がいいですよね。
だけど、私は設定と役者の良さが活きてなかったな…と感じました。
WOWOWで放映されたスピンオフドラマ「予兆」の方が黒沢清の本領発揮…と感じました。
「予兆」も編集して(恐らく)後に劇場公開されてます。
観てませんが。
もしレンタルで「予兆」を観られるなら、連続ドラマ版をご覧下さい。