「ミカンなんだな。」散歩する侵略者 のさんの映画レビュー(感想・評価)
ミカンなんだな。
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地球を侵略しに来た宇宙人達が、偵察のために人間のなかから「概念」を収集していくという設定が面白い。
彼らが人間から奪っていく「概念」とは、辞書にのっている「定義」のような普遍的なものではなく、奪い取った元の個人それぞれによって違うものである気がする。教会で子供たちに「愛とは何か」を尋ねたときに、それぞれの答えが返ってきたように。
最後に宇宙人が鳴海からもらった「愛」の概念は、鳴海から真治に向けた愛なのであり、愛情を手に入れた宇宙人が廃人となってしまった鳴海にかける「ずっとそばにいるからね」という言葉も、突然おかしくなってしまった夫に翻弄されながらも一緒に歩きつづけた彼女のなかにあった気持ちだったのだと思うと、切なくてグッときてしまった。
冷め切った夫婦関係から鳴海が愛情を取り戻した相手が、真治本人ではなく真治とは食べ物の好みも違う宇宙人だというのは皮肉な気もするけれど。
無機質で殺伐とした病室のなかで鳴海に差し出されたミカンの美しさだけでもう、この映画観てよかったな〜という気持ちです。
派手なアクションシーンよりも、宇宙人が散歩しながら概念を奪っていく様子や夫婦のシーンをもっと見たかったかも。
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