「愛は地球を救う? 愛って何?」散歩する侵略者 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
愛は地球を救う? 愛って何?
どこだかわからない、日本の地方都市。
イラストレーターの加瀬鳴海(長澤まさみ)の夫・真治(松田龍平)が保護された。
記憶も覚束なく、物事が判然としないような状態で。
彼が言うことには「ぼくは宇宙からの侵略者で、人間のことを知るため、ガイドをしてほしい・・・」。
一方、別の場所では、一家惨殺事件が起きる。
ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は、事件の生き残り・立花あきら(恒松祐里)を行方を追おうとしたが、現場からほど近い場所で天野と名乗る高校生ぐらいの少年(高杉真宙)と出あう。
彼が言うことには「立花あきらを一緒に探してほしい。彼女もぼくも宇宙からの侵略者で・・・」。
というところから始まる物語で、侵略ものSF。
ユニークなのは、彼ら侵略者が人間を知るためにしていること。
それは、「概念」を盗むこと。
おぉぉ、大学時代を思い出したぞ。
記号論でいうところの、シニフィアンとシニフィエ。
「言葉」を例にとると、言葉の表層(音や文字など)と、その言葉がもつ本質的な事柄(ここでいう概念)だ。
これはコワイ。
概念がなくなれば、その概念が指すもの自体がなくなってしまう。
真治の姿をした侵略者は、鳴海の妹(前田敦子)から「家族」を、引きこもりの青年(満島真之介)からは「所有」を、鳴海の上司(光石研)から「仕事」を、刑事(児嶋一哉)から「自分」と「他人」の概念を奪ってしまう。
特に、最後の「自分」と「他人」の概念を奪われると、どうなっちゃうのだろう。
コワイ、コワイ。
だけど、そのほかの三人は、なんだが意外と楽しそう。
そして、「愛」の概念を奪おうとして教会を訪れたものの、牧師(東出昌大)の心の中に明確な「愛」が浮かばず、奪えない、そんなエピソードもある。
これは伏線。
最後の最後、遂に侵略者たちが押し寄せるのだが・・・
へへへ、「愛」が地球を救うのね。
そして、「愛」を奪われたひとは、当初、「全然、以前と変わらない」と言いつつ、結局はもぬけの殻になってしまう。
愛って何? っていう落としどころの異色のSF映画。
愉しみました!