「「ナヤミ雑貨店1枚」と言ってしまったのは俺だけではないハズ・・・しかも“ざっきてん”と言ってしまった気がする。」ナミヤ雑貨店の奇蹟 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
「ナヤミ雑貨店1枚」と言ってしまったのは俺だけではないハズ・・・しかも“ざっきてん”と言ってしまった気がする。
高度成長期から1980年まで、ある町の商店街にあるナミヤ雑貨店の店主・浪矢(西田敏行)は手紙を介して人々の相談に乗っていました。2012年のある夜、強盗を働いた幼なじみの敦也(山田涼介)、翔太(村上虹郎)、幸平(寛一郎)の3人はナミヤ雑貨店という一軒の廃屋に忍び込んで隠れる。すると、シャッターの郵便口から一通の手紙が落ちてきた。それは魚屋ミュージシャンと名乗る男性が、ジョン・レノンの死んだ翌日からミュージシャンとして生活できるかどうか悩んでいるという内容だった。
古い雑誌から悩み事の返信を牛乳箱に入れると判明し、1980年という過去から来た手紙に対して、最初は興味本位で諦めるようにと返信する3人の青年。しかし、諦めきれない魚屋ミュージシャンこと松岡(林遣都)は店の前でハーモニカを吹く。その曲に聞き覚えのある3人は、同じ児童福祉施設「丸光園」の出身の歌手となったセリ(門脇麦)の歌だと気づくのだった。
1980年、2012年という時代設定の時間軸が目まぐるしく交差して、3人が共に育った丸光園が絶妙なバランスで絡み合ってくる。2012年から手紙を出すと、1980年に届き、1980年にお悩み相談を投函すれば2012年に届くという仕組みだ。彼ら3人は何度も手紙のやり取りをするものの、2012年の時間は止まっているような雰囲気。時空を超えた不思議な空間で、厳しい生い立ちを経験してきた青年たちは悩み事に真剣に取り組むようになっていくのだ。
“迷える子犬”からの悩み事は事務職とホステスとのダブルワークで生活しているが、お金のために愛人にならないかと客から口説かれているとのこと。その悩みに対して、事務職でまともな暮らしをして、バブルという時代に備えて経済を勉強し、土地を売り買いして儲けなさいと答える敦也。その答えを真摯に受け止め実行した子犬こと晴美(尾野真千子)。彼女も丸光園出身であり、経営に窮する丸光園を買収しようと計画を立てることになったのだ。
登場する人物が全て丸光園に絡んでくるファンタジー。そしてその交差する時空の中心にいるのはナミヤ雑貨店なのだ。浪矢は三十三回忌にもう一度だけお悩み相談を再開してくれと、息子(萩原聖人)に遺言する。今までの人生でどれだけ悩み相談が役に立ったのかを投函してくれと頼んだのだ。その三十三回忌が2012年。敦也が試しに白紙のまま投函すると、それに返事が返ってきたのだった。
2012年の時間経過がよくわからなかったですが、最後に氷解。ロウソクの長さや、ラストの映像、3人の行動で明らかになる。1980年、2012年以外にも他の時代の流れがわかりやすく挿入されているものの、丸光園が火事になった日などがスリリングには描かれてない。青年たちを中心に人の温かみは伝わってくるのだが、ファンタジーとしては面白さを半減させていると思う。山下達郎の「REBORN」がよかっただけに残念。
〈2017年9月映画館にて〉