劇場公開日 2017年10月7日

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「義を貫いた男の生き様」アウトレイジ 最終章 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5義を貫いた男の生き様

2022年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

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本作は、アウトレイジ3部作の最終作である。前2作は未見だが、北野武監督作品は以前から観たかったので鑑賞したが、予想以上の作品だった。オープニングからエンディングに至るまで、作品に乱れがなく整然としていて、緊張感を保ちながら、物語が展開されていく。全編を通して、変わらぬクオリティの高さに圧倒される、和製バイオレンス映画の傑作だった。

主人公・大友(ビートたけし)は、日韓両国の裏社会を牛耳っている張会長(金田時男)の庇護を受け、韓国済州島で平穏な日々を過ごしてした。ある日、ホテル宿泊客である日本・花菱会の幹部・若田(ピエール瀧)はトラブルを引き起こし、張会長の部下を殺してしまう。この事件をきっかけに、花菱会と張会長グループは険悪な関係となり、大友は、花菱会に立向っていく・・・。

花菱会内部の権力闘争が凄まじい。誰が味方か誰が敵か分からない、欲と金に目が眩んだ男達の、虚々実々、血みどろの、正しく仁義なき闘いが繰り広げられる。かつて一時代を築いた昭和・任侠映画にあった義理人情は皆無である。ここは、悪党役が似合う芸達者なベテラン男優たちを揃えた群像劇になっているが、特に、西野若頭役の西田敏行の硬軟を取り混ぜた、縦横無尽の老獪さ、野村会長役の大杉蓮の虚勢を張った小心振り、花田役のピエール瀧の人の良い小悪党振りが際立っている。殺伐一辺倒になりがちな権力闘争が人間ドラマに仕上がっているのは彼らの人間臭いキャラの賜物であろう。

彼らの対極にいるのが、大友と手下の市川(大森南朋)である。二人は義を重んじ、子分を死に追いやった花菱会、張本人である花田を愚直なまでに徹底的に追い込んでいく。特徴的なのは、二人が銃撃シーンで躊躇なく無表情で発砲するところである。興奮も罪深さも全く感じられない無感情さ、が義を全うしようとする二人の想いを体現している。特に、サム・ペキンパー監督の“俺たちに明日は無い”を彷彿とさせる、ラスト近くの大銃撃戦、大激射戦における、死に取りつかれたような二人の生気の無い表情が秀逸である。

銃撃戦、虚々実々の権力闘争には圧倒されるが、本作には、全編を通して寂寥感が漂っている。昭和の残り香が感じられる。本作は、アウトレイジ3部作の最終作であるとともに、日本における仁義あるバイオレンス作品の終焉を予感させる作品である。

みかずき