「シアタス調布にて観賞」アウトレイジ 最終章 shallowwhiteさんの映画レビュー(感想・評価)
シアタス調布にて観賞
物凄く期待をしていた。
大友(北野武)を追い込む強大な花菱会、警察の包囲網、繁田刑事(松重豊)の暴走、蛇蝎の如き西野(西田敏行)と中田(塩見三省)への凄まじい制裁……
……そんなものは何処にも無かった。
あるのは駆け引き皆無の一方的な謀略戦、嘘臭い大型火器によるカタルシス皆無の大虐殺、嘘臭いくらい反社勢力に弱い警察、愚痴を言うだけの松重豊、のうのうと権力を手中にする西田敏行&塩見三省……観たいものは何処にも無かった。
龍三と七人の子分』と本作を通して見ると、「北野武老いたり」と強く感じる。
シリーズ他作品と比しても覇気が乏しく、細部が行き渡らず、抑制も効かず北野武自身の好みの垂れ流しになっている。
本シリーズは通常の北野武作品とは色合い(役者含む)が違うことが魅力であったのだが、本作は色々と限りなく過去作品の繰り返しになってしまった。
特に北野武の極道への憧憬も抑制が効かず溢れ出してしまっている。本シリーズに、ご立派な極道(韓国系フィクサー一味)が遂に登場してしまったのだ。
極道が格好良くキマらないのがシリーズの魅力だったのだが。
漂う厭世感も自決願望も過去作の薄いやり直しに過ぎない。
脚本も雑だ。
大杉漣の無謀さと元銀行マンと思えない頭の悪さはリアリティの欠片も無い。こんな小物を裁いて何のカタルシスがあろうか。土に埋めるなら西田敏行でしょうが!
大森南朋の弟分も過去作の寺島進を薄めたキャラクターで、全く考えも葛藤も無く薄っぺら過ぎる。
また、大友最後の標的となった男(四方堂亘)の扱いが軽すぎる。
大友の帰国を知り、報復を受けること必至にも拘わらず、逃げずに日常を続けたあの男の葛藤こそ大友の自決願望より深遠だったはずだ。
また、シリーズお約束の恫喝罵倒合戦はまるで不発。強者から弱者への一方的な叱責が多い上に、パンチのある台詞を吐く新たな役者も居ない。
つくづく、武、西田敏行、塩見三省が『ビヨンド』のように吠えられないのが残念。
後者2人は病だから仕方ない。違う意味でハラハラするし、俳優の底力は感じたが。