「沼田まほかるワールドはアブノーマルな世界」ユリゴコロ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
沼田まほかるワールドはアブノーマルな世界
「彼女がその名を知らない鳥たち」の十和子も特異な女性でした。
「ユリゴコロ」の美沙子(吉高由里子)にはその存在の哀しさより
気持ち悪さ、の方が優ってしまった。
《人を殺すことでしか心を満たすことが出来ない人間》
そんな人がいるのだろうか?
歪んだ欲望・・・つまりサイコパス?
俗に「殺してみたかった」と殺人の動機を語る人間が存在する。
そんな殺人に快楽を感じる生まれの美沙子。
6歳位で友達を池に突き落とし溺死させる。
少女期(演じるのは清原伽耶)には、ボールがマンホールに落ちて
手が届かない少年。
大学生がマンホールの蓋を押し上げて少年を手伝っていると
美沙子(清原伽耶)が近づいてきてマンホールの蓋をドーンと
叩き落とす。少年は蓋に圧迫されて死亡。
大学生は美沙子の仕業にまるで気付かず、過失致死の罪で
執行猶予となる。
驚くべきはその大学生こそ亮介(松坂桃李)の育ての親の圭介
(松山ケンイチ)だったのだ。
その後、娼婦として生きていた美沙子に手を差し伸べて妊娠した
美沙子を引き取り結婚して田舎の住宅で血のつながらない子供を
出産させて父親として育てる圭介。
しかし美沙子はレストランに勤めていた時の同僚にオーナーの殺人を
黙っている見返りに体を要求される。
ホテルで待ち合わせした美沙子はその男を青酸カリで毒殺してしまう。
やがて刑事が家に現れて危険を感じた美沙子は家出を決行する。
しかし圭介がそれを助けるが、もう匿うのも限界と思い、
美沙子をダムに連れて行き
錘を付けて身投げさせようとする。
しかし最後の最後で救ってしまう圭介。
財布から有金を全部渡して、
「もう2度と俺たちの前に姿を表すな!!」と告げる。
そして成人した亮介は高原のレストランのオーナーシェフになっている。
恋人の千絵と結婚を控えたある日、千絵は失踪してしまう。
そこに事情を知る細谷と名乗る中年女性が現れる。
彼女(木村多江)こそ整形して生き直している母親の美沙子だった。
そして細谷は婚約者の千絵の居場所を亮介に知らせる。
東京のとあるマンションに着いた亮介。
ヤクザの事務所らしい場所には何人もの刺殺体で血みどろだ。
そして奥の部屋に監禁された千人絵。
ヤクザの死体の山は細谷の仕業と知れる。
ここまで無茶苦茶なストーリー。
細谷はターミネーターorジョン・ウィックそれともMr.ノーバディ?
細谷は亮介に殺人を犯させたくなかった・・・と、「母親の愛」みたいな
ことを言う。
事実、「ユリゴコロ」と書かれたノートを読み、母親が殺人鬼と知った
亮介は徐々に異常行動をとり始める。
「血を引き継いでいる?」
運転も無茶苦茶に荒くなり別人格が顔を出す。
それにしても嫌ミスだ。
吉高由里子は聖女のような顔なので、殺人鬼との落差に
「不幸に生い立ち」だなと思わせる説得力があった。
ひとえに演技力だろう。
松山ケンイチの受けの演技も見事だった。
松坂桃李は殺人鬼の息子の屈託と鬱屈そして生まれてくる殺意・・・
表情豊かに演じ分けていた。
木村多江はどうだろう!!
おめおめと整形して生き残っている母親役。
整形したと言う設定がどうしても嘘くさい。
沼田まほかるさんは「ユリゴコロ」を最後に小説を書いてないようです。
これ以上怖くて不気味な映画を観なくて済みそう。
吉高由里子はこの役で日本アカデミー賞の優秀主演女優賞受賞した。
集中力と思い切りの良さ。
殺人鬼の内面を演じた大した女優である。