「共感できない恐怖は蜜の味。」ユリゴコロ ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
共感できない恐怖は蜜の味。
開けてはいけないパンドラの箱。
でも、開けてはいけないと思えば思うほど、開けたくなるのが人間の業なのでしょう。
この映画のパンドラの箱は「一冊のノート」。
そこに書かれている禁断の真実に、耐えることができるかどうか。
そこが運命の分かれ道となっています。
人の優しさに触れながらも、生きることの厳しさを感じている一人の少女。
そんな板挟みの感情の中で、ふと芽生えてしまうのが「人を殺すことの快楽」。
殺せば殺すほど心が満たされて行き、擦り切れた感情も豊かになって行く。
それは、まさに負のスパイラル。
自分ではどうにもならない感情、衝動を、押しとどめながら行き続ける姿は、苦しみで満ち溢れています。
そんな彼女の拠り所となるのが、一人の青年。
容赦のない優しさによって、彼女の心は徐々に溶かされ幸福が芽生えるのです。
今回、吉高由里子さんの消えてしまいそうな、華奢で脆い演技に引き込まれました。
誰かのそばにいないと生きていけないような、寄生虫のような柔い姿は見るものを夢中にさせてくれます。
また、彼女のそばに寄り添い続けた松山ケンイチさんの存在。
昭和の世界観とマッチした黒髪に魅了され続けました。
ドロドロとした濃厚な恐怖が続いているはずなのに、どこか繊細で不透明な安定感も感じられる。
不協和音を奏でているような、独特の世界観に引き込まれ、あっという間の2時間10分でした。
「恐怖=快感」を味わいたい人にはお勧めです。
この感覚は病みつきになりそうです…。
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