「容赦のない愛の物語」ユリゴコロ テツさんの映画レビュー(感想・評価)
容赦のない愛の物語
とても見応えのある映画だった。
色々と強烈なシーン(濡れ場やリスカなど)もあるので苦手な人は苦手かも(これでも大分ない部類だと思うが)
皆素晴らしい演技だし、登場人物の熱が伝わってくるようでグッと掴まれる
現代パートがスタートし、青年の婚約者が消えるという謎から始まる(真相はなんだか突飛すぎて何か裏があるのか?とか思ったらそんなことはない。でも良いのだ、主軸じゃないし)
そしてノートを見つけて話は過去パートへ
それぞれ各時代の美沙子を演じた3名の演技は凍えるような感じで凄まじい。
前半部ではかなり光のコントラストの明暗が強烈で主人公の闇が深いものであるようなのを表していると思われる(そこまで全部は見られないけど強烈なコントラストだったし)
過去パートの登場人物は皆「死」に捕らわれているようで、共感は出来ないが惹きつけられ彼らの行く末に釘付けとなる。
死を拠り所にする者、死との狭間で生を見いだす者、死に捕らわれて地獄に落ちた者
三者三様の「死」への想いが彼らを結んでいく。
松山登場からは明るいシーンが増えていく。
ここから物語は殺人鬼の話から男女の、親子の愛の物語へとシフトしていく
現代パートでは婚約者の友人からの情報から真相が明かされ、彼もノートの影響から暴走を始め出す(ここは分かっていたのでここからどうなるかが見物だった。松坂桃李はああいう狂気じみた感じも似合うよな)
過去パートではついに現代へと繋がる話が進み、彼女の過去が容赦なく今の幸せを壊しにかかってくる。
さらにそこから事態は想いもよらぬ展開へと動き出す…
とネタバレない風に書いたが、婚約者の友人と名乗る女が実は美沙子(つまりは母親)という展開になる。(これは予想外でビックリ!なんか関係あんのかな?と思ってたけどもまさか!)
この辺はミステリとして驚愕展開で話的にも満足。
とまあダラダラと書いてはみたけど要するに強烈な設定の登場人物たちをしっかり演じきっていたし、ただの殺人鬼の話という訳ではなく、愛の物語であるということと言えるのだろう。
登場人物たちに自分との共通点を素直に見いだすことは難しく、共感出来るところも見いだせない人もいるだろうが(普通に暮らしている人ではなかなか…別のアプローチから共感したり共通点を見いだす人はいるだろうが)間違いなく愛の物語であり、最期の2人で会うシーンが美しく残る映画でした。