「鑑賞後にジワジワと侵食してくる作品」ユリゴコロ しゅんいちさんの映画レビュー(感想・評価)
鑑賞後にジワジワと侵食してくる作品
原作は未読なのですけど
なにやら、話題作らしいです。
僕は、まったくアンテナにひっかかりませんでした。
「沼田まほかる」さんという方の原作を「心が叫びたがってるんだ!」を今年監督された熊澤監督が監督。
主演は、松坂桃李 吉高由里子 松山ケンイチ 木村多江
という・・なんとも演技力の高い実力派で固められてる
一応は、ミステリー小説なのでいろんな伏線を張り巡らされた謎解き的な要素も含まれてるのですけど、監督の手腕なのか原作の解釈の仕方なんだろうと思うのですけど、わりと・・謎はすぐにわかりやすくて、あっという間にバレバレな感じなのですけど
人に依っては・・
前半の30分でいたたまれなくなり劇場から出て行ってしまうのではないか?
といった強烈な「闇」をはらんでる作品だと思いました
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ここからネタバレ
多分、元気な時に観たらもっと・・強烈にダメージを受けてたに違いない作品です。
まず・・
あらすじとして
生まれたころからすでに「心が壊れてる」女の子が主人公で
外に出ると、全てに対して危険を感じて常に安心感がなく警戒心しかない「心のよりどころ」のない女の子。
その女の子の幼少期から描かれるのですけど。。
しょっぱなから・・5歳くらいの女の子が殺されるというか・・
死に至るシーンがすでに強烈。
多分、ミュージックビデオなどの経験もある監督なのだと思うのですが、シーンの作り方がアートです。
「強烈なのに美しい」
そのあと、料理学校に通いだした「ミサコ」の友達の「ミツコ」
この「ミツコ」の壊れっぷりが・・とてもリアルで。。
「ミツコ」役が佐津川愛美さんで、とても強烈なインパクトで演じてくれます。
「ミツコ」は摂食障害と自傷癖もあって男性を受け付けない
「ミサコ」は殺人でしか満たされない。
いつか殺すかもしれないと思ってる「ミサコ」
いつか死ぬかもしれないと思ってる「ミツコ」
この歪(いびつ)な関係がどんよりと心を「闇」で満たしていきます。
そのため、後半のご都合主義的な「偶然な必然」の連続には感動するというよりも、なんとも「はまるはずのないジグソーパズルのピースをむりやりはめた」ような違和感がつきまとう。
松坂の演技が後半、狂気を帯びてくる
リアルじゃない感触は、効果音にもある
手首を切るシーンがあるのですが・・そんなにグチャグチャと音はしないし・・
人の首をしめるときに・・「ゴムを絞るような」ギューーーって音もしない。
この辺の効果音がどうにも、漫画の効果音の様に感じてしまい
変な違和感が残る
「ミサコ」の心情や「ミツコ」の心情も含め登場人物の心情はどれも理解できるし・・
「血族」としての「殺人鬼の血が流れてる事への絶望」は僕にはとてもよくわかる。
それでも・・なにやら微妙にずれてる
「当事者にしかわからない感性」と「原作を読んで作った他人ごとの感性」の間にある深い溝はどうしても埋まらず・・
観終わった後の直後の感想は
「大人のおとぎばなし」だね
のはずだった。。
が・・
知らないうちに・・その「闇」はしっかりと僕の中に爪痕を残してたみたいで・・
フラッシュバックするほどである。
断片的にリアルなものを、繋げてるので
やはり・・話の整合性が取れなくとも。。
それはそれで成立出来てる。
そんな作品でした。
強烈なインパクトを残してくれましたが
正直、これは是枝監督や、中島監督に撮って欲しかったかも。。
とはいえ、「ナミヤ雑貨店の奇跡」「三度目の殺人」の人気の中で埋もれさせてしまうにはもったいないと思える作品でした。