「痛いけど憎めない、笑って泣ける青春映画」スウィート17モンスター ジョーカーさんの映画レビュー(感想・評価)
痛いけど憎めない、笑って泣ける青春映画
青春映画がヒットする理由はなんだろうか。我々にとって登場人物は身近な存在でありながら、我々が夢見るような冒険であったり、そのような壮大な物語を展開するからというのが理由のひとつに挙げられると思う。
では、本作の場合はどうか。主人公ネイディーンは自分のことを“悲劇のヒロイン”だと思っている。そのせいか、周囲に対して少し浮いた発言や返答をしてしまう。
また、唯一の親友だと思っていたクリスタとも関係が悪化してしまう。
この関係が悪化してしまったのは、ネイディーンのせいでもあるのだ。
ネイディーンの性格は、この世に住んでいるほとんどの学生全てを表現しているといっても過言ではない。すこし大げさではあるが、そのような性格が、観客に好意を抱かせる。
ネイディーンをみていると、憎い、ムカつくというシーンもある。だが、なぜか全体としては憎めないのだ。
この絶妙なキャラクターを見事に演じ切ったヘイリーには開いた口が塞がらないほどだ。
タイトルにもある、“モンスター”という言葉にも意味がある。この場合、ネイディーンは自分が悲劇のヒロインだと思い込んでいる。
その思い込み、または自分だけではないということに気づかない。その痛さ。これこそが最も恐ろしい“モンスター”である。
甘い恋愛をしたり、自分の好きなことを出来る17歳。だが、その17歳にはモンスターが潜んでいることも忘れてはいけない。
アメリカの自由で美しい雰囲気、また挿入歌。これが見事に映画の世界観にマッチしているのも、本作の魅力の一つだ。
ヘイリーの周辺は全てがアメリカらしい。アメリカの習慣を象徴している全体像が観客をワクワクさせる。それぞれのシーンに合った曲も、話のテンポを良くする。
これが、ヘイリーを主人公とした映画に融合し、作品そのものに魅了される。
ただ、ヘイリーが自分だけ不幸だと思っているが、兄は実際不幸な出来事があまり起こっておらず、そう思うのも無理がないと思ってしまった。セリフ中に「自分だけが不幸だと?」というセリフがあるため兄も苦労をしているのだろうが、はっきりと分からなかった。
映画において、主人公に対して好意を持てることはとても重要なことだと思う。本作では主人公の痛さに好意が持てる。そんな愛すべきネイディーンを是非劇場で。