2016年カナダの作品
「stand off」は互いに武器を構えて動けない状態 「にらみ合い」「膠着状態」
非常に狭い場所を舞台に展開するサスペンスアクション
低予算かもしれないが、サミュエルLジャクソンを起用することで、視聴者に対する期待感を非常に効果的に演出している。
そしてこの脚本の練り込み方も良かった。
緊迫が続き、緊張感がリアルに表現されている。
突然起こった出来事
ヒットマン
目撃者
逃げ込んだ家
この作品の要素はたったこれだけだ。
ひとつ是非があったのは、あの小僧と呼ばれた警察官と警察組織
毎回似たようなシーンが登場するが、この警察官のシーンだけがいつも設定不足感が否めない。
ただ、
警察官を撃ち、椅子に縛り付けて拷問のように指をハンマーで砕くシーンは、ヒットマンがカーターの妻をどのようにするのかと、視聴者に思わせるために非常によくできている。
この作品は小説として読むことでもっと面白いように感じた。
読者は与えられた情報からかなりたくさんのことを想像するだろう。
それはとてもスリリングだと思う。
さて、
物語の原動力
それがバードとニックネームのあるイザベル
彼女の真っ赤な服は、おおよそ墓参りには合わない。
なぜ彼女は真っ赤な服で葬式に出席したのだろう?
それは、ヒットマンに殺された男女と神父とは関係ないことを示していたのだろうか?
しかしヒットマンはヒットマンのクセに、結構雑な仕事をしているように感じた。
ヒットマンはしつこさだけが売りで、カーターによって心理戦になっていることが掌握できない。
この部分もこの作品の面白さになる。
さて、
ヒットマンが現れ、慌てたカーターがショットガンの弾を確認する。
そこには2発あった。
当然2発しかないと視聴者は思う。
ところが実際には1発だった。
ここにこの物語最大の「ポイント」が隠されているように思った。
つまり、
弾はやっぱり2発で、バードにショットガンを持たせた時点で、カーターは弾を抜いたのだろう。
5発の弾を持つヒットマン
妻を呼び出されて人質にされてしまう絶対絶命
この時、カーターは妻を守ることに決めたのだろう。
妻を守ることができれば、当然バードも守れる。
万が一バードが引き金を引くことがあっても、彼女には絶対人に向けて銃を撃ったという経験はさせないという強い意思があったと思う。
その彼の意思こそ、ヒットマンをやっつけたのだ。
最後までこの「事実」は描かれない。
しかし、
カーターのやる気のないことで起きた息子の死
自分を許すことができないカーター
バードは、突然現れた疫病神だったが、ヒットマンになった男の哀れな人生を心理戦で読み解いたことで、弱さは自分だけにあるのではないことを悟ったのだろう。
奇しくも妻を呼び出したヒットマン
妻が自分を心配して飛んできた事実
カーターは、愛されていることを感じ取ったのだろう。
バードに殺人などさせない。
決死の覚悟と妻の機転
そして男の首に刺したナイフ
一発腹に喰らったものの、ヒットマンを制した。
瀕死の中、カーターはバードが引き金を引く音に気づいたように思う。
「よかった」
彼は心底そう持ったに違いない。
なかなか素晴らしい作品だった。
このサスペンスは、実に描かれない余白にこそ物語が隠されていると妄想した。