劇場公開日 2017年4月8日

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「一介の市民の目線で紡ぐダルテンヌ流サスペンス」午後8時の訪問者 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5一介の市民の目線で紡ぐダルテンヌ流サスペンス

2017年4月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

人生は“もしもこうしていたなら”という後悔で満ちている。本作のヒロインである女医のジェニーも「あの時、ドアを開けなかったこと」にとらわれ続け、遺体となって発見された少女の名前を知ろうと、事件の渦中へと飛び込んで行くことに。名匠ダルテンヌ兄弟の手にかかると、かくも警察などの捜査関係者とは全く違う一人の女性の視点で事件の追究が展開され、また彼女が出会う人々の証言からは、その地に根ざした貧困や移民、犯罪、医療、または親子や家族間の関係性といった様々な様相が垣間見えてくる。その誰もがそれぞれのレベルの「あの時こうしていたら」という思いを抱えて生きていることも印象深い。初めは事件に首をつっこむヒロインの行動が衝動的なもののように思えるのだが、それは106分を通じて「なぜ彼女はこの診療所に居続けるのか」といった命題への答えにも成り得る。本作は周囲を解き明かすことでやがて自分自身の使命感や胸の内にたどり着く映画とも言えるのだろう。

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牛津厚信