夜明けの祈りのレビュー・感想・評価
全49件中、41~49件目を表示
性暴力がなくなることを祈って
ストーリーは、第2次大戦末期にソ連軍によりレイプ(性暴力)を受けた修道女が妊娠し、その苦悩を描いた映画です。主人公のフランス人の女医、マチルドは修道女から「助けてください」と言われ、修道院に駆け付けたところ、妊娠したためお腹が大きくなり苦痛にうめく修道女がいました。(妊娠したのは計7名)その彼女たちの治療を行い、助けるという内容です。
本来、マチルドはフランス人の軍人の治療のためポーランドに派遣されていました。そのため、上司からポーランドの修道女を助けなくてもいいと言われますが、修道院の院長などから「マチルドでないといけない」と言われ、夜には、ソ連軍がいて危険な地域であるにも関わらず、身を挺して治療に当たっていきます。
修道院の院長などは、妊娠したことが公となると修道院が閉鎖となりかねないと気にしていました。それは、修道女は貞潔であり一生独身でならなければいけないとされているからです。本来、非難され苦しむべきは、レイプ(性暴力)をした人です。しかし、性暴力の場合、被害に遭った人が精神的にも肉体的にも苦しみます。(映画の中でもそのシーンがありました。)
また、レイプされたことにより生まれた子であっても修道女からすると自分の子であることから愛情が湧くのかな、また、その生まれた子にレイプの責任はないことから、(中絶をしなかったのであれば)一般の子と同じく愛情を持って育てていかなければいけないと思ったりもしました。
マチルドを演じた「ルー・ドゥ・ラージュ」という女優さんの透明感あふれる演技が印象に残りました。
重たい内容の映画であり、涙なくしては観れませんが、「生きること」をしっかり教えてくれる素晴らしい映画ですので、是非、みなさんも時間が許すのであれば、観てみてください。
なお、映画を観た「新宿武蔵野館」という映画館は、こじんまりとしていて、とても落ち着く映画館でした。
この世から性暴力がなくなることを祈って筆を置きます。
淡々とし過ぎていて…。
修道女と女性医師と戦時下で事実がベースだからこの重さが当たり前なんだけど…淡々とし過ぎて朝から見るには睡魔との闘いが…。
戦争の残酷さと、その時の弱いもの達の逃げ場のない悲惨さ、ひとつひとつの行動の重大さがひしひしと伝わってきた。
院長の判断も責められないとは思うけど…。ラストの展開は救われたかも。
女性の脆さと強さと美しさ
平日の昼間に満席でした。
映像と音楽と女優の凛とした美しさ。
何度も見返したくなる映画です。
僧服を着て修道女になっても、神様は守ってくれないのか。
いや、自分の信仰への誇りを奪われてからが本当にキリストに捧げた人生になり得るのか。
修道女ではない私も召命について祈らずにいられない。
白と黒の美しさ
シスターの姿に重なるポーランドの美しい雪山の絵に惹かれた。日本版のポスターじゃなくて本国のポスターは本当に美しいからちょっと見てみて欲しい。
先日の残像も良かったけど今作品も素晴らしくポーランド映画が好きになった。シスターの世界も今迄詳しく知らなかったがとても神聖で最悪の屈辱を受けて生まれた生命に対する心持ちも様々で考えさせられた。
暗い美しさに惹かれる秀作。心からお勧めしたい。
進む道
第二次大戦下ポーランドの女子修道院で起きた人の生命に波及する残酷な事件と信仰、救いの話。
ソ連兵達による凌辱により妊娠した7人の修道女という、信仰の有無に関わらずあまりも残酷な事実。
更にはカラスの鳴き声に繫がる残酷な信仰心。
信仰する人を否定するつもりはないし、作中でも一般の人には理解出来ないという台詞があったが、修道士同士であったって解釈は異なる訳で、信仰心のない自分には自己都合で「思し召し」の重さと内容が選択されている様にしか感じられない。
そんな姿と態度をみせられながら、医師として命と向き合う主人公の誠実さと聡明さに救われる思いがするし、修道女達の心に影響を与えたのは神でも院長でもなく赤ん坊と医師という事実。
ラストは少しテイストの異なる描写も入っているけれど、胸が少し熱くなった。
静かに考える映画
信仰とは、ということを深く静かに考える映画です。
新たな命という絶対的に善と思われる存在も、産む側からするとそうではない場合もある、という考えてみたら当たり前のことも考えさせられます。
でも、小難しくはなく、後味はいい映画です。
軽くはないけど重すぎることもなく、映画としてちゃんと成立してる作品です。
闇に葬りかけた史実に灯をあてた秀作
作品が始まって直ぐ「この作品は史実に基づいています。」というテロップがでます。最近、史実に基づいた…と謳う作品に遇います。何かこれが私自身の色んなレビューを書く「壁」になっています。「これは、事実なんで」と言わんばかり。何処までが事実なんだろうと思ってしまいます。
過去に起こり得たことは、闇に葬るのではなく、真正面から向かい合わなけれならないであろう。
今回の作品、邦題が極めて美しい情景のイメージを受けましたが、その内容は物凄く惨く悲しい作品であった。作品を見終わって、修道院の院長マザーオレスカという女性。かなり憎みました。日ごろから、神への愛や信仰の祈りはなんであったのか。
女性が「子供を産む」ということが、いかに魂の救済であり、「神からの授かりもの」ではないのか。しかし、彼女だけを恨むのは全く間違ったことであると感じた。一番に恨むことは、人間がいかに醜い争いをしたこと。過去の人間の悪行が愚かであったことを未来に向けての平和ある秩序ある地球、世界にすることが我々の使命であることを訴えかける(多少気分が悪くなる内容ではあったが、此処も史実らしい。)作品であった。
やはりズシリと来る作品ではあったのだが、疑問に残る所はある。フランス赤十字に働くマチルドが上の者に事実を述べ、修道院に起こった出来事を訴え、助けることを進言しなかったのかということである。サミュエルも同じ。
閉鎖的であった修道院が、ラストあまりにも開放的で眩い修道院になったことへの場面は、落差が大きく過剰演出ではないかとも思った。(これも史実に基づいたことなのか。)
無残にも亡くなってしまった神の子が、ただただ希望の灯を浴びていることを祈るばかりである。
誰も語ろうとしない戦争の犠牲者たち
第二次大戦終結間近のポーランド。
フランスから赤十字で派遣された医師のマチルドは、田舎町の修道院で、多くの修道女たちがソ連兵から暴行され、妊娠している事実に直面してしまう。
という実話の映画化。
これまで描かれなかった戦争の被害者たち
彼女たちが苦しむ中、加害者は罪を問われない不条理。
しかし、マチルドが修道女を訪ねることで、暗闇だった修道院にわすかな光が差し始める。
最後には希望の光が見えたことにホッとした。
信仰と命
修道女が雪道を走るシーンの美しさからはじまる。
舞台は第二次世界大戦後の混沌としたポーランド。若きフランス人女医がソ連兵からの蛮行によって身ごもってしまった修道女たちを救った実話をもとにした作品である。
線引きをする、という行為は誰でも無意識にしている。例えば国境、性別、宗教、、などだ。修道女たちは度々、神の秩序のためにその身に宿った命を頑なに隠そうとする。信仰か、命か、その選択を迫られた時、女医のマチルドは国境という線引きを越え、命を救うために冷静に力強く行動した姿は逞しく偉大だった。
救い とは何であるのか。救いを求めての信仰は、本当の意味での 救済 であるのか。度々考えさせられた。
フランス映画祭2017のトークで、このような事件が今も続いているということを忘れてはならない、と監督が語っていたのが印象的。
全49件中、41~49件目を表示