「市井の詩人」パターソン odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
市井の詩人
パターソン (ニュージャージー州)はニューヨークから北西に35Km、バスを乗り継いで1時間もあれば行けるでしょう。映画にも映っていた大きな滝のある街で水力発電などで古くから工業の栄えたところでした。劇中では詩がサイドテーマのようですがジャームッシュ監督は若い頃に詩人のウィリアム・カーロス・ウィリアムズがパターソンにささげた詩集(劇中で永瀬さんが持っていた本)を読んで、とても興味を持ち何度も街を散策したようです、バスやバーでの人々の会話に触発されて映画化の構想を温めていたとのこと。主人公の名前もパターソン、バスの運転手をしながら詩作を嗜む物静かな青年で美人の妻とブルドックの倹しい暮らし、そんな一家の一週間が淡々と綴られる。
主人公の詩はアメリカの詩人ロン・パジェットの作、冒頭からマッチへの執着のような詩が綴られるが私には良さが分からない。少女の詩の方がましに思えたがこちらは監督が創ったそうだ。
終盤になって永瀬正敏が出てきたのには驚いたが、監督は滝の風景から日本を連想し、以前、同監督のミステリー・トレイン(1989)に出演していた永瀬さんに声を掛けたそうだ。
愛妻家ではあるのだろうが奥さんのパイを褒めながらも水をがぶ飲み、カーテンの模様の褒め方も素っ気ない、何気ない生活の一コマなのだが頷けてしまうから可笑しい、可笑しいと言えばブルドッグのマービン、留守番中の悪戯はよくある話ですが、ご主人の大事な詩のノートをビリビリにしてしまうのですが、いつも散歩中にバーの外で待たされる意趣返しのようでもあり受けました。
こういう平凡な日常描写はベテラン監督の腕の見せ所なのでしょうがなにせ単調なので若い人には退屈な映画かもしれませんね。