「3人の強い女性」20センチュリー・ウーマン vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)
3人の強い女性
女性の強さを飾らずに描いた作品。
2017年のアカデミー脚本賞にノミネートされた本作。ずっと前から気になっていた作品でしたが、ようやく観ることができました。脚本賞というのはもちろん、脚本家に贈られる賞ですが、監督にも編集者にも贈られてもいいと思います。映画というのは、3度書き換えられると言われています。脚本で、撮影で、編集で。ハリウッドは特に特徴的で、脚本家はプロダクション行こう全く作品に関わらないということも稀ではありません。この作品は、脚本家が監督もするパターンですが、脚本家のマイク・マイルズと監督としてのマイク・マイルズとは別人と考えてもいいと思います。
素晴らしい脚本は、キャラクターが動いている。もちろん、キャラクターは常に動いているのですが、動かされているのではなく、自分から動いているキャラクターというのは作品中でかなり生き生きしています。この作品の優れているところは、3世代の女性キャラクターをステレオタイプではなく、ユニークながらもその世代を象徴するように描けているということです。その3人の女性はジェイミーという少年を中心に描かれます。まず、ドロシー。ジェイミーッの母で戦争を経験し、夫と離婚し女で1つで息子を育て上げてきた強い女性です。息子の幸せを願う母親ですが、「自分よりも幸せに生きてほしい。」という願いが強すぎるが故に少し硬い部分があります。しかし、2人のシェアハウスの住人と、ジェイミーの幼なじみによってその硬さがとれ、少しずつ柔軟になることにより、彼女の人生にも小さな光が降り注ぎます。アビーはドロシーの家で一室を借りる写真家。若い輝きを放つ彼女ですが、その光が強すぎて、時には前が見えず道を外してしまうときもあります。しかし、ジェイミーという年下を気にかけることで大人の女性として落ち着きや責任を感じるように。ジェイミーの幼馴染のジュリーは思春期でなんでも吸収してしまう女の子。ドロシーとアビーの大人の姿を見て、憧れとそこからくる反感から自分とは何かを探していきます。この3世代の女性が失ったもの、まだ持っていない部分をお互いに気付かせ合い、人生とは幸せとは何かを探して行くその好奇心など、とても深い部分に入っていきます。
編集もとてもバランスが良く、咲く日のリズムをうまくつかめているように感じました、リズムと一言で言える言葉ですが、2時間の映画の中でそのリズムを作り上げて行くことはとても難しいものです。そのリズムにより、キャラクターたちの立ち位置、関係性が大きく変化するため、そのリズムを見失うことは、映画を崩すことに一致します。キャラクターを中心とした脚本と編集があってこそのこの作品の良さが最大限出ているのではないでしょうか。キャラクター同士の関係を考慮して、女性という大きなテーマを描いた素晴らしい作品です。