「「ラ・ラ・ランド」への当てつけだったら、とても笑える」カフェ・ソサエティ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
「ラ・ラ・ランド」への当てつけだったら、とても笑える
「カフェ・ソサエティ」(原題:Cafe Society)。
81歳にして47作目。ウディ・アレン監督の最新作。いまなお、"年1作ペース"で作品を生み出すバイタリティ。脚本も書き下ろす創作力はもはや"超人"である。
1930年代のハリウッド黄金期の社交界(=カフェ・ソサエティ)における青年ボビーの恋と別れ、そして人生の成長を描くロマンティックコメディ。上から目線でハリウッドを見つつ、ニューヨークを文化的な上位に置き、諧謔をもってユダヤ人をイジる表現手法などはお手のもの。
ウディ・アレン作品は、"合わせ鏡"のように監督自身を投影したエピソードがかいま見られ、どこまでがカミングアウトで、どこからが創作か分からないような自虐的な恋愛事情が笑いを生み出す。観る側は等身大のリアリティに共感するか、ないしは物見高さを開放すればいい。
まるで観客自身の経験値を試されているような、達観した恋愛論。
本作はまた40年前のアレン監督のアカデミー監督賞作「アニー・ホール」(1977)のセルフアレンジ的な展開になっていて、老練な映画術の行き着いた、何年経ってもブレないオリジナルの作風である。
アレン監督としては、「マジック・イン・ムーンライト」(2014)、「教授のおかしな妄想殺人」(2015)と、2作連続で主役抜擢した、エマ・ストーンにヴォニーを演じてもらいたかったようにも感じられる。エマ・ストーンは「ラ・ラ・ランド」と結婚(出演)してしまい・・・穿った見方をすれば、偶然にも「ラ・ラ・ランド」(2017)への当てつけのようにもなっている。
「ラ・ラ・ランド」は、マーティン・スコセッシ監督の「ニューヨーク、ニューヨーク」(1977)をモチーフにしていると言われるが、実は同じ1977年公開の「アニー・ホール」の男女設定とも近似している。それだけオーソドックスな展開なのだが。
2作に共通する、同じハリウッドの黄金期に起きた若者の恋愛の行く末。アレン監督は"この2人の余韻はこう表現するんだよ"とでも言っているかのようで・・・。これぞ熟練の技。
所詮、"恋愛"の選択は、"後悔"か"未練"のいずれかを残すに過ぎない。「カフェ・ソサエティ」の余韻には、恋愛を達観したオトナの境地が定義される。
(2017/5/13 /TOHOシネマズ日本橋/ビスタ/字幕:松崎広幸)