「多くの人が観て考えるべき」わたしは、ダニエル・ブレイク sannemusaさんの映画レビュー(感想・評価)
多くの人が観て考えるべき
イギリスの福祉のひどい現状を、心臓病を患ったダニエルとシングルマザーのケイティという社会的弱者に追いやられた彼らの立場から、淡々と見せつける作品。
過度な演出や説明はない。にも関わらず、ぐいぐいとダニエル&ケイティの身上や境遇や怒りや悲しみに引き込まれてゆく。
ダニエルはけして甲斐性なしじゃないし、わからずやでもないし、実直に長年働いて税金も納めてきたし、困った隣人に手を差し伸べることのできる、ごく善良な普通の市民だということがひしひしと伝わるからだ。むしろ、金や生活がかかっていても卑怯な手段は選ぼうとしない彼の高潔さには感服する。
(私個人は、支援を受ける側に一定の条件が課されるべき、というその基本スタンス自体に疑問を呈したいけれど)
私はイギリス国民ではないから、本作の真偽は判断できないけれど、日本でも同じことが起こっている、起こりうる、という危機感が確実にある。
市民のための行政だというのに、目的を忘れた態度で働く公人たち。親切さやユニバーサルな目線が欠如したオペレーション。果てには思いやりの行為が非難の対象になるというありさま。。
私は公人ではないけれど、自身の職分において同じようなことをしでかしてしまっていないだろうか?
こんな状況を防ぐため、あるいはこんな状況下にある人々の手助けになるため、自分には何ができるのだろうか?と考えはじめている。
多くの人に観て欲しいと思った作品。
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