「.」レジデント 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。デンマーク産の感染系ホラー、原題"Sorgenfri(物語の舞台となる町名、英題:"What We Become")"。日常に紛れる異変──不気味なニュースや屋外で始終響く虫の羽音、屋外パーティで嘔吐する男等、些細な事から始まり、軍が乗り出す事態に発展する。感染者は、壁や天井を這ったりする超人じみた全力疾走系ではなく、昔乍らのノロノロ系で灯りに反応するのが特徴。丁寧な伏線を積み重ねる起伏に乏しい中盤辺り迄は良かったが、その先の展開が粗く、定石通りに運ぶプロットが凡作へと貶めた。55/100点。
・軍の制御が効かなくなった隔離された町で配給が停止、可愛がっていた兎の“ニノス”を手に掛けてしまったり、助けた女性の食料を奪ったり、最愛の娘に銃を向けざるをえない状況等、極限状態におけるエゴや醜さ、業が凝縮され上手く織り込まれていた。ただ邦題やプロモーション等、相変わらず不釣り合いでちぐはぐな印象を受けてしまった。
・庇っていた母親を滅多斬りし、眼玉を突き刺すシーンを始め、ラスト10数分で一気にグロ描写が詰め込まれているが、それ迄の見せない思わせ振りな演出を度外視した事で、均衡を保っていたバランスが著しく乱れ、興醒めしてしまう。これらは盛り上げる効果を狙ったのであろうが、台無しにする悪しきサービス精神と云えよう。ただ全体としては至ってマイルドな仕上がりであり、ゴア描写を目当てにすると肩透かしを喰らう。
・忍び寄る恐怖を日常に絡めてドライな語り口で最後迄淡々と描き切っていればもっと好きになっていたと確信する。恐らく『エコーズ('99)』や『サイレントノイズ('05)』、『シエルター('09)』、『テイク・シェルター('11)』等と云った一風変わった怪作に化けていたのではと悔やまれる。
・“ソニア”の(M.ボーダとクレジットされている)M.ハマー・ボーダ、序盤に近頃では珍しく若きベビーフェースの女性による喫煙シーンがあった。ただこの役柄は、母親の雲行きが怪しくなりだすと、やりまくると云うビッチな一面も持ち合わせるヒロインであり、その彼女と息子の同衾の最中に飛び込み、冷静に対応する母親と云う哂えないシーンもあった。亦、感染者に紛れてその群れを横断するシーンでは『ショーン・オブ・ザ・デッド('04)』を想起した。
・デンマーク製と云う事で、見慣れないキャストばかりだったが、“ペルニール”のM.ディーネセン、誰かに似てると思ったら、L.ハミルトンだと気付いた。
・鑑賞日:2018年1月20日(土)