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あらすじ(「僕の兄は殺人鬼!僕だけがこの秘密を知っている!わぁ友達の生首!兄に気づかれたかも!」)にある内容を、映画前半まるまるかけてなぞる構成のため、そのぶっ飛んだ設定に慣れてしまうと正直眠気を誘います。
兄に秘密を知った事がバレて、ようやくあらすじから抜け出したかと思えば、ありがちな家族モラル劇に変貌。そこで私はげんなりしましたが、本番はここからでしたね。
ああそういえばホラー映画を観ていたんだ、と思い出させてくれました笑
派手なアクションや捻った物語はなく(設定は別)、精神的に抉ってくる陰鬱系。むしろ「ホラー・スプラッターファン向けの道徳映画」といった趣きでした。
差別・性的倒錯・暴力・歪んだ愛…こうした暗い感情の根源を分かりやすく描いていたと思います。
なので、エンタメ性を求めると肩透かし(☆-1)ですが、ターゲット層は間違いなくホラーマニアに向いており、もしかしたらそのメッセージに何かしら刺さる方もいるのではないでしょうか。今日は抉られてもいいかなって時にどうぞ
以下【ネタバレ】含む感想
テーマは「負の連鎖」でしょうか。差別や虐待の根底にあるものをホラーに落とし込み、その鎖に苦しみもがく少年マーティの視点でモラルドラマが進みます。
道徳劇は順調に進み、マーティも最終的に兄の凶行を理解したうえでやはり止めようとしていたのは、まさにその鎖を断ち切ろうとしていたシーンなのだと思いました。
しかし「家族という密室」で既に負の感情が培養されまくった怪物の兄を止めることはできずとうとう惨事へ…。
皮肉にも、兄の最終スイッチを押してしまったのが純粋な兄弟愛という点が何とも言えない気持ちになります。悲しい
製作費8000ドルの低予算だそうで、確かにスプラッター部分はグロいけどチープさが目立っていました。
でもこれは作中劇(兄が盗んだレトロ映画)内のみだったので、逆にこういう演出なんだと自然に受け入れてました。まさかこの性的倒錯ビデオが、このまま客に想像させる為の布石だったとは…w
ラストは兄が両親に何をしているのかを直接見る事はできませんが、私達は充分学習できているのでどんな事が行われているのかがよくわかる、そのいやらしい構成力という工夫に脱帽です
演技も良かったと思いますが、それ以上にこの兄弟はよくその役を引き受けたな、という役者魂への評価が強いです。笑
特に兄に至っては、数人の黒人女性を殺し生首で死〇、最後は自分の母親も…と書いてて吐き気を催すレベル
(これは父の何気ない差別思想が、兄の性的倒錯を後押しした形ですね…改めて負の連鎖が何を生んだのかが際立ちます…)
総括
総じて、チープさを工夫に変えた点と分かりやすいテーマ性は高評価(☆+2)。
ただ、あらすじ消化パートが長すぎるのは減点(☆-2)
マーティのラストは、最後の独白も含めて、どうとでもとれる終わり方であったのが個人的に好きではないので残念でした(☆-1)。
生き残れはしたものの、鎖は断ち切れたのか、いつかは同じ沼に足を踏み入れる事を悟ったのか、単純にショックでよりおかしくなったのか…。答えは投げられて終わりましたが、道徳映画としてはこういうものなのでしょう。
親と子、両方の視点で観ても「誰もが壊れる可能性がある」だからこそ身近にいる家族は、話し合い、お互いに寄り添い合う姿勢が大切なのだと、私は捉えました
なお、他にも色々考えていた筈なのですが、唐突な兄の全裸シーン(☆+1)により私の思考は倒錯的に吹き飛んだ事を備忘録に残しておきm