「マスクの下のダース・ベイダー」I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
マスクの下のダース・ベイダー
「スター・ウォーズ」シリーズでダース・ベイダーを演じた俳優デヴィッド・プラウズに迫ったドキュメンタリー。
…しかしながら本作、ルーカスフィルムとは一切関与ナシ。R2役の故ケニー・ベイカーやプロデューサーらスタッフ何人かのインタビューはあるものの、SWの映像も音楽も一切使用されず、ルーカス本人のインタビューもナシ。
何故なら本作、SWの栄光を語ると言うより、暴露話。今「ローグ・ワン」が盛り上がっているが、本作を見たらSWの闇の部分が垣間見える故、ファンは見ない方がいいかもしれない…が、野次馬的興味は尽きない。
まず、デヴィッド・プラウズについて。
身長2mを超える巨体を活かして、ハマーフィルムのホラー映画で怪物役を好演。
素顔の役は稀で、「時計じかけのオレンジ」で車椅子の老人の怪しいボディガードと言ったら分かる人も居る筈。
そして映画史上屈指のキャラクター、ダース・ベイダー役に抜擢されるのだが…
ダース・ベイダーと言ったら真っ先に誰を思い浮かべるか。
勿論デヴィッド・プラウズを挙げるファンも多い。が、
自分もそう。ジェームズ・アール・ジョーンズ。「ローグ・ワン」でもその声にしびれた。
マスクの下の人物については、何かの裏話で、ルーカスが頭を抱えるほど殺陣が下手だったぐらいにしか知らない。
しかしながら、ファンの脳裏にダース・ベイダーのインパクトを焼き付けた立役者ながら、声も顔も奪われた事実はあまりにも不憫…。
「新たなる希望」でベイダーの声も自らやる事を望んだものの、訛りが酷いとの理由で却下。仕方ないか…。
「帝国の逆襲」で、本作のタイトルにもなっている台詞を差し替えられた事は有名。
まあこれは、大どんでん返しの秘密を守る為でもあり、デヴィッド・プラウズだけじゃなく多くのスタッフにも知らされていなかったのであれこれ言う問題でもないが、「ジェダイの帰還」は酷い。
ずっとベイダーを演じ、遂にラストで素顔を見せる時が来たのに…、これも有名な話で、ベイダーの素顔は別の俳優(セバスチャン・ショウ)が演じる事になった。
デヴィッド・プラウズへの功績も信頼も、全て抹消されたと言っても過言じゃない。
しかも現在では、「ジェダイの帰還」でベイダーの素顔はヘイデン・クリステンセンになっているという皮肉。
作り手にとって日陰のキャストの存在って…。
デヴィッド・プラウズにも否が無い訳ではない。結構口を滑らす人なんだとか。
「帝国の逆襲」でベイダーとルークの父子関係について語った記事が残っていた。
しかしこれは、「帝国の逆襲」脚本執筆前のデヴィッド・プラウズの単なる憶測が偶然にも一致しただけらしいが、これから脚本を書こうとしてるルーカスはどう思ったか。
「ジェダイの帰還」でベイダーが死ぬ運命にある事をリーク。
しかしこれは、濡れ衣。
事実無根なのに、今ではルーカスフィルムとの関わりは全くのゼロで、公式イベントにも呼ばれない。
ダース・ベイダー役で多くのファンに愛されながら、ダース・ベイダーに翻弄され…。
本作のラスト、彼の為にあるシーンの再撮を敢行。
ルーカスフィルムから訴訟を起こされそうなレベルなので、そのシーンを見る事は本作でも出来ないが、ファンが本当に見たかった真の顔。
「ローグ・ワン」で再びスクリーンに蘇り、圧倒的なカッコよさを見せつけてくれたダース・ベイダー。
劇中で描かれるその境遇は波乱に満ちているが、演じた人物もまた然り。
素顔に触れて忘れられないだろう。
マスクの下のダース・ベイダーを。
エンディングで、特殊メイクやマスクに素顔を隠した名優たちを紹介。
出来れば、中島春雄氏も紹介して欲しかった!
昨年の東京国際映画祭にてプレミア上映、WOWOWで先行放映。
1月7日より公開。