「なんで原作を改悪した?」不能犯 戒音さんの映画レビュー(感想・評価)
なんで原作を改悪した?
映画、及び原作漫画のネタバレを含みます。
無理やり短時間に詰め込もうとして失敗した例の一つ。
観始めてまず真っ先に違和感を覚えたのが、メインキャラの性別改変と性格改変。
見終わってからは、この監督や制作会社は原作を読んでないか、原作へのリスペクト精神ゼロだろ…って感想。
原作と同じなのは宇相吹や多田、夜目などのメインキャラの名前と、宇相吹の特殊能力だけ。本当にただそこの設定だけを借りたオリジナル作品みたいな印象。
原作で宇相吹はもっと飄々として人を揶揄って遊ぶようなキャラなのに対し、映画では口調こそ原作っぽくしてるけど性格は只管根暗。
ライバルの立場となる多田刑事は男性。映画では女性。ここを改変した意味も本気でわからない。
何より、原作では宇相吹への個人的な怒りや憤りで必死に追うのに対し、映画だと一刑事が刑事としてただ容疑者を追ってるだけって感じで、個人の魅力としても宇相吹との因縁めいた関係性も無に近いほどにチープ。
夜目刑事は原作だと多田が心から信頼し慕っていた先輩で、生前の多田への言葉や行動は死後も多田を奮い立たせ、宇相吹逮捕を誓う原動力にもなる。
けど映画の多田は、ぱっと出てぱっと死ぬし、死後の特別感も皆無で完全なるサブキャラ扱い。
原作を読んでなかったとしたら、多分この映画を観て数年後には内容を忘れてるんじゃないかなってくらい全体を通して薄っぺらかった。特に登場人物の感情は、この人今何考えてんだろ、って想像すら難しいくらい薄い。
自分は原作を読んではいるけど、失礼ながら大ファン!ってほどじゃない。
そんな自分でこの感想だから、原作がめちゃくちゃ好きな人が観たら更に酷評になるんじゃないかな。