「なかなか良質な王道サイバーパンク」ゴースト・イン・ザ・シェル ヨックモックさんの映画レビュー(感想・評価)
なかなか良質な王道サイバーパンク
決して駄作などではない王道でレトロなサイバーパンク。
攻殻機動隊のファン作品というよりも、時代遅れなベタベタサイバーパンクに対する愛に満ち溢れた絶滅危惧種的SF作品だ。
散々悪評ばかり耳にしていたので覚悟して観たがどの要素を取っても十分に及第点を超えているSF映画。騒いでいるのは攻殻機動隊のコアなファンだけではなかろうか?
かくいう自分も押井守の攻殻機動隊(他は別にそうでもない)の大ファンだが、おおいに楽しんで観ることができた。
街の遠景は狭いエリアしか描写されず芸のない立体映像を並べているだけのダサい印象を受けたものの、香港の裏路地とニューヨークを足して割ったようないかにもサイバーパンクな市街地の描写は小ネタとツッコミ所に溢れていて素晴らしい! 室内のデザインもレトロフューチャーな感じで久しくこういう世界観に飢えていた自分には「そうそう、これこれ」といった満足感が得られた。
シナリオは原作の深遠でよくわからない哲学的なテーマを根本がらぶち捨てて、陳腐なハリウッド的SFシナリオ…機械化した人間の意思と尊厳の在り方を“よくある悪い会社”(本当にサイバーパンクSFには良く出てくる)との戦いを通じて描くというものに置き換えている。攻殻ファンが怒り狂うのはこの要素なのだろうが、中途半端に原作のシナリオを真似るよりも、いっそここまでハリウッドナイズしてくれたほうがむしろ心地よい。
少なくとも自分にとっては攻殻機動隊のキモはそのテーマではなく描かれた世界観であり社会システムでありガジェットであり、何よりゾッとするとどカッコいい廃墟ビルや電光掲示板やバラック郡なのだ。
ヒロインの国籍もおおいに叩かれていたが、それほど気にすることなのだろうか? この映画においてヒロインは必ずしも黄色人種ではなければならなかったのだろうか? こだわる意味はないと思える。
なぜビートたけしを起用したのか…。ひとりだけアウトレイジじゃないか…。
バトーさんカッケェじゃん。トグサだけすぐわかった。