劇場公開日 2017年4月7日

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「凡作だが映像は秀逸」ゴースト・イン・ザ・シェル 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5凡作だが映像は秀逸

2017年4月9日
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鑑賞方法:映画館

 最近3D映画を観るたびに、2Dでよかったと思うことが多々あったので、この映画も2Dの吹替版で観たが、もしかしたら3Dのほうがよかったかもしれない。それに字幕版がよかったかもしれない。
 舞台は近未来というよりも遥か未来と思われる設定で、街の様子が賑やかすぎてうるさく感じられる。風俗はニューヨークと東京と京都のミックスみたいで、著しく雑然としている。絶対に住みたくない街のひとつだ。言うなればテクノロジーが高度に発達したスラムのようで、街として既に壊れている感じがある。しかし面白い。

 この街にはもはや守るべき秩序も美観も存在しないのではないか。主人公の属する公安は何を守ろうと言うのか。そんなイメージがしてほぼ感情移入は不可能である。
 この映画は最初から観客の感情移入など望んでいないようだ。ひたすら作品の世界を描くことだけに専念している。オタク的な世界観でリアリティに乏しいが、映像は秀逸でそれなりに楽しめる。ストーリーだけからすれば、二度目を観る気は起こらないが、映像が凄いので、3Dの字幕版でもう一度観たくなる。

 それにしてもアメリカ映画というのは、どうしても作品のモチーフを家族愛とか恋人への思いといったステレオタイプのテーマにしてしまいがちである。本作も例外ではない。
 桃井かおりとスカーレット・ヨハンソンの二人の場面は、この組合せ自体が奇想天外で、違和感たっぷりだった。この場面からどことなく感じた現実味の乏しさは、作品そのものの現実味の乏しさに通じるものであった。

 褒められた作品ではないが、雑然としたカオスみたいな未来都市の映像は一見に価する。わざわざ時間を作って観に行くほどではなく、ヒマなときに3Dの字幕版で見ることをおすすめする。

耶馬英彦