「愛おしくてたまらない」僕と世界の方程式 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
愛おしくてたまらない
この映画の中で起こること、人物の一人一人が愛おしくてたまらない。
数学に強い自閉症の内気な少年が数学オリンピックに出て成長して、最後は金メダル貰うような青春ストーリーかな くらいに思っていたら全然違った。
どのキャラクターも好きなんだけど、特にどうしても平凡な母親に共感せずにはいられなかった。
特別なネイサンを愛し一生懸命に接するけどなかなか理解し合えず、そんな息子と楽しく触れ合えている夫を亡くすなんてもうさ…
持病を抱え、弱い心と怖れを持つ先生もまた好き。
惹かれあってるのに踏み出せない それでも不器用に笑うしかない二人を応援したくなる。
ネイサンとはまたタイプの違う自閉症で苦しむルーク。テレビのコントを真似てコミュニケーションを取ろうとするのに胸が締め付けられた。
チャン・メイはもう最高。
家族との軋轢に苦しみながらもまっすぐネイサンと向き合い、ゆっくり英語を話す姿が本当に可愛い。
二人のこそばゆいキスシーンにはドキドキせずにいられなかった。
最後、ネイサンが競技の場を飛び出したときはさすがにびっくりした笑
でも彼は答えが一つに決まっている数学の競技よりも、今うずいて仕方ない人間の奥にある誰も答えを知らなくて曖昧な感情と向き合うことを選んだなと思った。
葬式の場でも繋ぐことを頑なに拒んだ母親の手を握る場面にもう嗚咽が止まらなくなってしまった。
ネイサンとチャン・メイ、母親と先生 どう生きるのかわからないけれど幸せに幸せになって欲しいと心から思えた。
できればその後をあと10分でいいから観せて欲しい…
映像も良かった。
ネイサンに見える世界、涙越しに見たような滲んだ光の描写や魚と水の描写がすごく綺麗だった。
数学と図形が好きな主人公だけに、整然と机が並んでいたり所々無機質な図形のような景色が映るのもすごく良かった。
あとバターフィールド君の眼は宝物だな… 澄み切った青色が美しい!
とにかく語りきれないくらいの素晴らしい映画だった。
映画館を出たら夕暮れ時の恵比寿ガーデンプレイスが綺麗な景色で、余韻でまた泣きそうになった笑