劇場公開日 2018年7月7日

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「「極悪女王」的な着眼点の良さを、全部監督が台無しにした作品。」菊とギロチン ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)

1.5「極悪女王」的な着眼点の良さを、全部監督が台無しにした作品。

2025年4月24日
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鑑賞方法:VOD

難しい

斬新

関東大震災直後頃の女相撲一座と、社会主義者やアナーキストの結社「ギロチン社」のお話。
似たような映画を挙げるなら、「金子文子と朴烈」に近しいテーマを扱った、社会派映画になる。

まず、「女相撲」を題材にしたアイデアは、斬新で興味深かった。
自然と色んな事情を抱えた女性が集まるだろうし、
そこから社会派のテーマを深堀りすれば、話を展開しやすい。

何よりもまず、プロレスラーを題材にした2024年の話題作ドラマ「極悪女王」のような、
激しい肉体と肉体のぶつかり合いや、思いや感情を剥き出しにした、
愛憎、葛藤、対立を見せ場にしていけば、女相撲でも同様の見せ場や面白さを表現デキたはず。

しかし、この映画はヒットしなかった。
感想やレビューもあまり良くない。
なぜなのか?

それは、ギロチン社側の男性方の描写や物語が、ことごとく酷いからだ。

「極悪女王」にも個性強めの男性キャストは沢山いた。
興行主としての松永兄弟は、女性プロレスラーたちの愛憎、葛藤、対立の、
起爆剤や着火装置として、悪役的に機能し、引っ掻き回し、
物語を展開させていた。

しかし、この作品のギロチン社にいる社会主義者やアナーキスト達は、女力士の起爆剤や着火装置として動く事は無く、
対等的に登場する割に、無能で、頭でっかちで、空想革命思想的で、
ようするに口だけのハッタリで、何一つ成し得ていないダメダメな男で、
女力士達の足を引っ張るだけなのだ。

クズ男という意味では、極悪女王の松永兄弟らと共通してるのだが、
松永兄弟らはクズだけど優秀でもあり、団体を向上させたり、売上を上昇させたりする、
経済的経営的な勝者でもあったのだが、
こちらの作品のアナーキスト達は、常に敗者であり、被害者意識だけが強い負け組であり、
世の中の役に立つ事がないゴロツキでしかない。
はっきり言って邪魔者でお荷物連中なのだ。

だから女力士は、本来は国家よりもまず先に、ギロチン社の男どもを敵視する方が自然なのだ。
しかしそうはならない。原作があるわけでもないのに、
物語の縛りがあるわけでもなしに、女力士達と対等で、
国家やら権威やらを憎む同志として描く。
そこが常にシラケ要素になっている。
シラケているのに、強引にその構図のまま話を進めていく。

なぜなら、瀬々監督がそういう物語を描きたいからである。

瀬々監督は、良いとされる作品も撮っているが、
先日の「少年と犬」のような、トンチンカンな破綻駄作映画も撮るような、
作品クオリティーが不安定な映画監督だと、個人的には思っている。
平気で酷い映画を世に出すなあと私は思っている。
私の独断と偏見でいえば、今回の作品は瀬々監督の、酷い方の作品だと思う。

女相撲という着眼点は良かったし、良くなりそうな題材だとも思ったが、
瀬々監督の描きたい事そのものが、
ギロチン社の男達と同じレベルの、エゴイスティックな欲求だったのではないだろうか。

そもそもこの映画は、同監督の他の作品群にみられる、
商業主義的成功を目指した雰囲気を、していない作品だと思うから、
瀬々監督は、本来は相当クセの強い側の監督なのだろう。
「菊とギロチン」は、そのクセの強さの純度が、極めて高いのだろう。

はっきり言って、ギロチン社の描写の8割は、削除してもよかった。対等ではなく、サブでよかった。
もっと言えば、削った分、女相撲の描写を見せた方が良かった。
実際、前半の取組みパートだけは面白かった。

さらにいえば、主人公花菊が男らに語る説明セリフ、
朝鮮人力士の十勝山が男に語る説明セリフは、
生い立ちや体験談なのだから、カットして、
回想映像の方が良かったのではないだろうか。
説明が長い長い、眠くなる要素で、私はここで途中離脱した。

無駄な部分が多すぎて、だから3時間超になるのだ。
東出、井浦、山中、寛一郎辺りは、豪華過ぎる。
8割シーンを削るか、キャスティング格下げ変更すれば、
予算も浮くはず。
それ位いらなかったと思うし、女力士達の描写だけで、
充分、朝鮮人差別やらフェミニズムやらは、できたと思うんだけどなあ。

まあ一番無駄なのは、鑑賞完走すら果たしてないのに、
こんなダラダラ駄文書いてる自分なんだろうけど。
щ(゚д゚щ)カモーン

良かった演者
韓英恵
渋川清彦

ソビエト蓮舫