「自由を求めて土俵に立った私たち俺たちの青春」菊とギロチン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

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菊とギロチン

劇場公開日 2018年7月7日
全48件中、1件目を表示
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自由を求めて土俵に立った私たち俺たちの青春

タイトルだけでは一体全体どういう映画なのか、予想も付かない。
“ギロチン”だから、残酷系…?
いえいえ、ドスコイ級の力作!

まず、“菊”。これはヒロインの名前。
地方の貧しい暮らしの若い女性・花菊は、嫁ぎ先の夫の暴力に苦しみ、耐えるだけの日々。
そんな時、巡業中の女相撲一座を知る。
強くなりたい一心と自由を求め、家出同然で一座に入り、女力士として修行の日々。

“ギロチン”とは、格差の無い平等な社会を目指すアナキスト・グループ“ギロチン社”の事。
変革の為には時に暗殺などの手段も厭わない過激思想。
そんな時、女相撲一座と出会う。
人々を沸かせる彼女たちの姿と闘いぶりに魅了され…。

時は大正、関東大震災直後。
震災で人々の暮らしはさらに困窮。
追い討ちをかけるかのように、軍が台頭。
楽も無ければ自由も無いそんな時代に於いて、厳しい現実が襲いかかり、模索しながらも、自由を求めた若者たち。

大正時代に実在したという女相撲一座とアナキスト・グループ。
史実では双方の出会いは無かったらしいが、もし出会っていたら…?
実在の人物や事件/出来事も登場し、ノンフィクションとフィクションの大胆な構成。
彼らの交流や淡い恋模様、社会派メッセージ、体当たりの相撲試合などを織り交ぜた、大ボリュームの青春群像劇。

時々作品にムラがある瀬々敬久監督だが、『ヘヴンズストーリー』同様、オリジナルのインディーズ作品でこそ真価を発揮する。
構想30年。3時間の長尺ながら、名演出で堂々と活写。とても『8年越しの花嫁』や『ストレイヤーズ・クロニクル』を撮った監督とは思えない。
ロケーションや美術セットが素晴らしく、生きた事の無い大正時代の空気が伝わってくる。

フレッシュな才能が花開いた。
オーディションで選ばれた木竜麻生の瑞々しい演技。
本作が演技初挑戦の寛一郎の複雑な演技。
東出昌大も熱演、個性派たちがしっかり脇固め。
中でも、韓英恵が悲しみや苦しみを吐露するシーンは胸揺さぶられる。

見て、面白かった/楽しかったと言える作品ではない。
思想や時代背景など小難しい点もあるし、重苦しいシーンも多々。
人々の娯楽の女相撲ではあるが、時々卑猥な見世物として見られる。
力士たちはほとんど、訳ありの女たち。この時代は圧倒的な男尊女卑社会だった。
力士の中に日本人と身分を偽る朝鮮人がおり、その悲劇。在郷軍人に強いられる迫害と暴力。
変革を諦めず、強行手段に出るアナキストの若者たち。逮捕か死かの悲しい末路…。

息が詰まるほどの閉塞、のし掛かるほどの重圧…。
劇中で若者たちは何度も何度も何度も、胸の内を叫ぶ。
これが私たちの俺たちの自由だァ!
生きざまだァ!
青春だァ!
私たちの俺たちの声を聞けェ!

近大
さん / 2019年5月19日 / スマートフォンから投稿
  • 評価: 4.0
  • 印象:  悲しい 興奮 知的
  • 鑑賞方法:DVD/BD
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