「熱量の素晴らしい青春群像劇の傑作」菊とギロチン あいわたさんの映画レビュー(感想・評価)
熱量の素晴らしい青春群像劇の傑作
アナキスト集団(というよりテロリスト集団の方が適切か)と女相撲とを結びつけた発想が凄い。実際には全く関わりなかったそうなのだが、こんな繋がりが史実でもあったかも、そう思わせるリアリティが素晴らしい。
関東大震災の混乱に乗じて朝鮮人や左翼活動家が虐殺されつつも微罪に付された大正時代に比べ、SNSを含めたメディアが力を持ちペンは剣より強しを地で行く現代はなんと平和な世の中になったことか。
一方で、自分とは相容れない異質物を暴力を以って断固排除する。そういう社会の空気はまさに現代と同じ。結局、暴力の種類が拳や拳銃による肉体的な暴力からペンやメディアによる精神的な暴力に変わった、それだけなのだ。
3時間を超える大作ながらもその長さを感じさせない熱量が圧巻だ。纏まりは無いがだからこそ余韻が残る、それこそがリアリティを追求した群像劇の真骨頂だと思う。
時代にドンピシャでマッチした、数年に一度の傑作に出会えた。
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