「難しすぎる」光(大森立嗣監督) R41さんの映画レビュー(感想・評価)
難しすぎる
タイトルの光の意味はどこにあるのだろう? 逆説的に「闇」を問うているのかもしれない。真夜中の海と真っ白に光る月 この作品の象徴だ。光を反射して光っているように見える月。実際にあるのは闇。
離島 そこは単なる田舎ではなく、非日常的なことが日常的に起きている。
主人公のノブユキの妻だけが離島出身ではない。その妻ナミコは日常生活と、特に夫からくるフラストレーションに悩み続ける。
彼女はおそらくごく普通の主婦を表現している。彼女の素行は満たされない思いからくるもので、さらに娘がいたずらされたことが心の中に澱となって苦しんでいる。
ノブユキは妻を愛してはおらず、本心を語ることもせず、古い団地から出ようともしない。
彼の心の闇は、彼がタスクに言った「あの時どうすればよかったのか?」に示されている。
幼いノブユキは叔父に犯されているミキを見てしまう。ミキはその時良い表情をしていた。しかし見られているのに気づいた彼女は、ノブユキに助けを求め、さらに殴ることも依頼した。確かにノブユキはどうしたらよかったのかわからなかったと思う。彼女を取られた怒りか、または助けたい思いか? 彼女の表情に感じた違和感。待ったなしに迫られた決断と結果。それが彼の心の底に今でも澱になってたまっているのだ。
「あれ以来私は感じなくなった」 ミキが悪魔に心を売った瞬間 そしてそれ以来彼女は「自分の都合に合わせて男を取り換えてきた」
これが二人が結婚できなかった理由だ。彼女のために殺人を犯したノブユキ。彼女に選ばれなかった理由がわからないまま、妻さえ愛せずただ生きているのだ。
そしてところどころに使われるシーンの中に、椿の花が散らされている。
椿は島の特徴で島を表し、娘の名前と同じで娘を表している。
その椿はあまり美しくなく、時折腐っている。
彼らの腐った思いが、彼らを腐らせた島が、今娘までを腐らそうとしているのだろうか。
タスクは親に虐待されながら育ち、誰も庇ってくれる者はいなかった。彼はノブユキに「悪いのはあの島、クソ暑い夏」そして「ユキ兄はミキから抜け出せない。俺もユキ兄から抜け出せない」
タスクは自分のこともノブユキのこともよくわかっていた。しかし脅迫してお金を取ろうとした。今の自分自身の不遇を島の所為にし、親の所為に、そしてノブユキの所為にしたかったのだろうか。
ノブユキがタスクに「お前はゴムのこともSEXのことも、殺したことも誰にも言わなかった。でも俺は殴られているお前に何もできなかった」 本心を打ち明けておきながら、ノブユキがタスクを殺したのはなぜだろう?
「こうなるのを待っていた」 タスクが殺されながらそう言ったが、同じようなシーンがミキとノブユキの会話にも登場する。
「これで死んでくれる?」「そういわれることをずっと待っていた気がする」
ノブユキの深い闇。
作中、ナミコがノブユキに「話がしたい」といったことで、ノブユキの心境が爆発する選択を彼が想像する場面がある。実際には心を殺して穏やかに答えている。
本心が言えない男。彼の闇がとても深いことが伺える。
しかし妻に対しては「ツバキを肯定できないと、自分を肯定できないよ」などと的確なことも言う。
しかしそこにあるのは体裁上うわべだけの言葉。誰かの言葉。知識上の言葉。その言葉に心は乗っていない。
一瞬爆発しそうになった自分の本心を垣間見たときから、ノブユキは自宅に帰らなくなった。
タスクに父を殺させて埋める穴を掘り、ミキのところに行き…
タスクを殺した後、彼はようやく自宅に戻る。
うれしくはしゃぐ娘、落ち着きを取り戻したかのような妻は、彼に何も言わない。
彼のしたことは浮気相手のタスクの郵便で知っている。
タスクが埋められている古びたアパートから1本の木が生えている。
おそらく椿の木だろう。彼の死体は発見されないままアパートも朽ち果てたのだろう。
ノブユキの闇は、ナミコの心をも闇で包んでしまったのだろうか?
しかしこの作品は難しすぎてわからない。共感できない。
三浦しおんさんの小説だと知り、多少納得しつつも、正直面白くない。
ナミコが夫の真実を知ったことで、この先どうなるのだろうか?
何も解決されないまま物語は終了するが、正直この余韻はいただけない。