「『タイトルとラストシーンに込められた想い』」光(大森立嗣監督) 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
『タイトルとラストシーンに込められた想い』
自宅(CS放送)にて鑑賞。交錯する過去に縛られ、複雑なしがらみに藻搔く人々を描くミステリー。25年前のエピソードの雰囲気や画面は『天城越え('83)』を想起した。合っているのか、浮いているのか、判り辛いデトロイトテクノの雄、J.ミルズのザラついたBGM。心情描写と呼ぶには軽薄な短いカットバックの繰り返しも唐突でややアンバランス。後半に差し掛かるに少し冗長で間延びした印象を受け、物語としての迷いを感じた。全篇を通し、希望や救済、カタルシスが得辛い感覚ははたして狙いだったのか、そうなってしまったのか。60/100点。
・主従関係が目まぐるしく変わる物語。誰が誰を支配していたのか、従属していた筈なのに、或る瞬間から突如、立場が逆転する。ほんの些細なきっかけから、取り巻く環境を含め、全てが変わって行く──その分岐点を見守る作品なのかも知れない。
・グロい展開や描写も少しあり、それらが苦手な人の鑑賞は要注意である。主要な登場人物が少なく、物語自体もシンプルな故、演技や描写、展開等の粗が際立ち、それらが大きなマイナスポイントとなった。
・地震や津波による行方不明と現代風で記憶に新しい題材が採り入れらている。背負った過去に追われ、平凡な日常が崩れ行くのは『淵に立つ('16)』に少し似た感傷を抱かせる。ラストの大木(椿)とタイトルに作り手が模索していたであろう着地点があると思えた。
・“黒川信之”を演ずる井浦新に乞われた捉え所の無い“黒川輔”役の(永山)瑛太──何を考えているのか判り辛い、或る種不気味な役所は一時期の萩原聖人を髣髴させる。“黒川南海子”の橋本マナミはそこそこ観れたが、“篠浦未喜”を演じた長谷川京子に売れっ子としての存在感や四半世紀に亘り一方的に慕われるオーラが感じられず、残念だった。“洋一”の平田満、“小野”の南果歩は流石で、少ない出番の端役ながら異様な雰囲気を盛り上げる役割をしっかり果たしている。