「エンド・オブ・バイオレンス」LOGAN ローガン 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
エンド・オブ・バイオレンス
『X-MEN』シリーズの人気キャラ・ウルヴァリン
=ローガンを主人公にしたスピンオフの3作目。
同シリーズでブレイクしたヒュー・ジャックマンが
ウルヴァリンを演じるのも今回限りとのことだし、
プロフェッサーX=チャールズを演じたパトリック・
スチュワートもやはり同役は今回が最後とのことで、
2000年から続いてきた『X-MEN』シリーズのひとつ
の区切りとなる作品である。ちょいと寂しいね。
おまけに蓋を開ければヒーロー映画としてはかなり異色の作り。目からビーム撃ったり鉄橋をねじ曲げたり
竜巻を起こしたりなど、従来のド派手なVFXは皆無。
予告編の雰囲気通り、西部劇やロードムービーのような
味わいの映画に仕上がっていた。
...
そもそも今回のローガンは衰え切っている。
無敵の治癒力を持ち、100年超の時を生きてきた
ローガンの人生も、アダマンチウムの毒に侵されて
いよいよ終わりの時を迎えつつある。
精悍で俊敏だった“ウルヴァリン”は今や見る影もなく、
治癒力も薄まったせいでチンピラを倒すことすら一苦労。
(そのお陰でアナログなアクションシーンひとつひとつに、
これまでになかった苦痛と緊張感が付与されている)
ヒーロー映画というジャンルでは異例の(勿論
X-MENとしては初の)R指定作品である点にもビビる。
ローガンの爪が人の胸や頭部をもろに貫くシーンが
これでもかと登場するし、年端もいかない少女が
敵を切り刻むシーンもあるのだからこれはやむなし。
“人を殺す”という行為をヒロイックにではなく、
ひたすら暴力的で血生臭い行為として描くことが
今回のテーマには必要だと考えたのだろう。
被害が及ぶのが主人公達だけではない点も残酷。
一般的なヒーローものであれば救われるはずの
農場一家は情け容赦なく皆殺しにされる。
それどころか農場主は、家族が殺されたのは
この異邦人たちのせいだと悟り、ローガンに
向かって引き金さえ引いてみせる。
あのシーンでのローガンの表情。
もううんざりだ、と言わんばかりのあの表情。
...
「彼らは悪い人だった」
「同じことだ」
正義の為、生き残る為、
そう主張したところで人殺しは人殺し。
誰かを殺せば何かが後ろを追ってくる。
あらゆるマイナスなものが後ろを追ってくる。
恐れ、恨み、憎しみ、悲しみ、あるいは力を求める邪な野心。
それが自分を傷付け、自分の大切にするものをも傷付ける。
傷付けられないように追ってくるものを殺し、また追われる。
長い長いローガンの人生は、ひたすらにその繰り返しだった。
(最後に追ってくる敵がかつての自分、という点がまたニクい)
その長い長い人生で、数多の人を殺し続けてきた
男が、自分そっくりの境遇の少女に遺したのは、
「殺すな」という遺志だった。
お前ならまだ引き返せると。
獣ではなく人間として生きろと。
死ぬのはもう老いぼれた獣一匹で十分だと。
...
暴力しか知らなかった少女ラウラも変わる。
人や家族の暖かみに触れ、それを失う怒りと悲しみを知り、
暴力だけが解決法ではないことを学び取って行く。
X-MENのコミックを肌身放さず持ち歩いていたラウラ。
あのコミックはエデンを探す道標であった訳だが、
ラウラにとっては同時に、未だ会ったことのない
父親の姿を知る為の“よすが”だったのかもしれない。
十字の墓標をXの形に傾けた彼女は、今までずっと
コミックの中の父親に憧れていて、最後の最後に
憧れた父の勇姿を見られたと感じたのかもしれない。
「まだ君には時間がある。人生を感じろ。」
あのチャールズの言葉に対しての、ローガンの
最期の台詞が沁みる。彼が最期に感じたものを、
この先はラウラが引き継いでいけると信じたい。
...
ラウラがローガンを父と認める流れをもう少し
子細に描いてほしかったという気がするのと、
存在感たっぷりな義手兄ちゃんにもう少し活躍して
欲しかった気がするのが若干の不満点ではあるが、
暴力に関する物語、そして家族の物語として
ものすごく見応えのある秀作でした。4.5判定で。
<2017.06.02鑑賞>
お久し振りです。
コメントありがとうごさいます。
ローガン、私も見ましたが
やっぱり一抹の寂しさは拭えないですね。
ヒーローの晩年はかくも辛いものかって
描写が心に刺さりますねぇ。
レビュー素晴らしくて頷きっぱなしです。
私は最近文章が出なくて中途半端なレビュー
ばかりでお恥ずかしい限りです。
これからも覗かせて頂きます。