「真実の愛を知る」LOGAN ローガン nagiさんの映画レビュー(感想・評価)
真実の愛を知る
X-MEN初代から唯一のフルランナー、ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンことローガンの完結作。
私はX-MENを新作が出る度に過去作を逐一観返しているわけではないので、特に初期3作の記憶は薄れかけているが...
思い返せば、彼は一番の苦労者だった。確か、ローガンはチャールズに強引にX-MENに加入させられたように思う。チャールズはマグニートーも、サイクロプスもそうであるが、割と強引に人を説得する。しかし、彼の強く、輝いた目と強い信念に、誰でも信頼を寄せてしまうのだった。
そういえば、ジーンとの色恋沙汰もあった。サイクロプスと恋愛関係にあったジーンに惚れ、サイクロプスと敵対するシーンもあった。あなたに愛情の何がわかる、そう言われていたような気もする。
何と言っても、最も特筆すべきは彼の優しさだった。どの作品に於いても彼は、嫌々ながらも、困難を抱える仲間を、助け、救ってきた。私が忘れられないのは、ウルヴァリン/SAMURAIである。日本が舞台だったということもあるだろうが、あの庭園での死闘が非常に印象的だった。赤の他人をも他人事と捉えず、闘う姿に、心を動かされたファンも多かったはずだ。
ローガンが完結する。彼の生き様の集大成とは、一体どんな形なのか。
それは、『愛』であった。
自らを救ってくれ、生きがいを与えてくれたチャールズと、自分の遺伝子から生まれてしまったローラ。この3世代の人物は、いずれも凶暴なミュータントとして、世界に狙われ続ける。そんな彼らが、「普通の」家族愛を描いているのだ。ローガンは、チャールズを父として彼を責任もって看病し、ローラはそんなローガンのボロボロだが、厚い背中をさながら父親をみるように見つめる。
何をやっても、自分がどれだけ闘い、人を殺しても、誰も幸せにならない。「殺人者は一生その烙印を押され、そこから逃れられない。」死にたくても死ねぬミュータントの身体、一生剥がれぬ殺人者のレッテルを貼られた優しき心、チャールズの死、絶望の底に沈み、何故自分は彼女をエデンに連れて行っているのだろうか... そんな彼はローラに、「死ぬときはアダマンチウムの弾丸で自殺しようと思っている」と語る。
彼は、最後の力を振り絞って、ローラのために闘った。そして、全てを薙ぎ払い、ローラのために力尽きた。
ローラは涙を流し、彼を「Daddy」と呼ぶ。
ローガンはそこで初めて、真実の愛に触れた。「あぁ、こういう感じなのか...」
彼は、自殺の道ではなく、愛するローラのために、彼女らの未来を救うために死ぬことができて本望だったのだろうか。
或いは、娘への本物の愛情を知ることで、1秒でも長く、もっと娘と一緒に生きていたいと願ったのであろうか。
いずれにしても彼の死は、X-MENの枠組みを超え、1人の父親として、偉大なものでった。