汚れたミルク あるセールスマンの告発のレビュー・感想・評価
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「知って」もらいたいことがある
今回、「汚れたミルク」のレビューを書くにあたって色々なことを考えた。映画の内容について旦那と議論を重ね、カシミール問題についての資料を読み、ネスレ・ボイコットについても調べた。
ちょっと蛇足だが、液体ミルクの表示問題に関しても情報収集しておいた。
それくらいこの映画の訴えは鋭く奥深い。
まず、ちまたに跋扈する「自己責任論」の無責任さがある。
そもそもの発端は利益優先の経済活動にある。母乳での育児が充分可能な母親に対しても粉ミルクを処方する、あからさまな経済至上主義の横行を告発する、というのが骨子だから当然と言えば当然だ。
これに対するネスレ(作中では途中からラスタと仮称)の態度が「自己責任論」のお手本のようなのだ。
「製品に不良はない。誤った用法での健康被害には責任がない」まぁ、それはそうだろう。企業にだって従業員がいて、彼らの生活がかかっている。経営は慈善事業ではない。
正論なのだが、汚水でのミルク作りや貧困からくる少量化はアホでも見えていた「誤った用法」じゃないのか。
売るだけ売ってあとは知らん顔。責められれば「自己責任」を持ち出すその態度は、舞台となったパキスタンだけでなく、今や世界中にはびこる闇だ。
この悲劇を防ぐ為に、一番重要なのはやはり「知識」だと思う。大袈裟なものでなくて良い。
適量とは何か?免疫とは何か?自分の経済状況は?それは自分に必要なものか?
それを判断するだけの「知識」は、生きていくために絶対必要なもので「知る」ことなしに前には進めない。
「汚れたミルク」の投げかける問題はさらに一歩進んで、インド・パキスタン・中国にまたがるカシミール地方の水資源問題も提起する。「じゃあ水を確保出来ない政府が悪い」という「悪者探し」に、事はそんなに単純じゃないんだよ、と諭すように。
カシミール地方を水源とするパキスタンにとって、チベット山系の領有は大きな問題だ。上流のインドも水不足に悩まされ、インダス川がどうなるかで両国の運命が決まると言っても過言ではない。
飲料だけでなく、その水源は灌漑用水としてパキスタンの主要産業である農業に利用され、世界の綿花の約3割がそれによって生産される。
私たちが安価に利用している綿だって、その影響を受けているのだ。勘のイイ人はもう気づいているのではないだろうか?我々もまた無数の屍の上に生きていることを。
世界で起こっている様々な問題は、細い糸をたどっていけば全て自分につながっている。誰かが得をすれば誰かは損をし、誰かの涙が誰かを救う。全ての人間が幸福だけを享受することは出来ない。何かを我慢し、どこかで損を引き受けなくちゃならないのだ。
問題なのは、「それを知らずにいること」で、この映画はそのきっかけを与えてくれる。
心配しなくて良い。世界中で起こっている素晴らしいことも、たどっていけば必ず自分につながるのだから。ささやかな事でも、例えば「知る」事だけでも、それは世界のどこかで必ず花開くのだから。
企業の果たすべく責任
実話に基づいた話であり、重みがあります。
私自身も一般企業に勤める身なので、企業が果たすべく責任について考えさせられます。
正しいことをした人間が、なぜあのような目にあうのか?
映画を観終わって晴れ晴れすることは決してありませんが、多くの人に見てもらいたい映画です。
いい映画だと思います
いい映画だと思います。といいながら、ちょい後半寝落ちしましたが。粉ミルクを汚れた水で溶かし、乳児に飲ませることで成育障害や病気になる、その事実の内部告発を行なったある男のお話。
男が就職から内部告発に至り、会社と権力によって弾圧を受けるその経緯を丁寧にかつ端的に追っている。なので、理解しやすいし見やすい。
ただ映像作品を制作して広く事実を知らしめようとする、ということなのだが、映像制作している人たちの立ち位置が途中までよくわからない。そこがぼんやりしています。
あと音楽はいいです。滲みる音楽です。
巨大な市場を死守しようとする大企業とその恩恵を受ける政府、悲しいかないつの時代、どこの国でも同じようなことが起こっているものです。
多国籍企業ネスレ社に喧嘩を売る為に
事実を基にした話ながら、2006年ドキュメンタリーを製作する模様を描くドラマという体で映画は作られている。なぜそういう作りにしないといけないのか、訴訟対策の為。
最初はインド映画っぽい。94年パキスタンが舞台やけど。
邦題がセンセーショナル、タイガーは営業マンの事。
確かに粉ミルク自体が毒なのではなく、それを溶く水と用量を守らずケチって薄めて飲ませる事が問題で、メーカーの責任の範囲かといわれると確かに。
それよりも問題なのは多国籍企業のスケールにモノをいわせる金満営業スタイルと広告宣伝にある、といえるがそんなこというたら今度は電通が怒ってきそう。
粉ミルク問題はもっと前から世界中でいわれているという告発も。
78年 アメリカ上院公聴会 乳児用ミルク審議
アヤンがネスレに入ったのは90年代後半
ドイツ人がドキュメンタリー番組放送しようとしたのは2005年?
アヤンが家族と再会出来たのは2007年、カナダ移住
乳児患者の映像の一部は89年に撮影
それ以外の映像は2013年パキスタンで撮影されたもの
この映画は2014年に公開
日本で上映されたのは2017年
多国籍企業の 影響の大きさをこのあたりからも感じる。
この映画を見て日本でまた母乳至上主義的なものが 幅をきかせて おっぱいをあげたくても母乳が出ないお母さんの肩身が狭くならないことを祈るばかり。
こんな話が多いのは問題
パキスタンで20世紀末に起きた実話。
×××社(最初だけ実名で、すぐに仮名に)がパキスタンで販売した粉ミルク、商品そのものに問題があったわけではなく、当時の汚れた水道水を使い、幼児が下痢を起こし死者が多数出た。
問われたのは、水道水が汚れていることを知っていて粉ミルクを販売したこと。
多国籍企業の対応はすさまじく、告発者一家は故郷に帰ることが出来ないとのこと。
たぶん今も続く悲劇
パキスタンはこの映画で見る限り、人工ミルクは医師の処方で手に入れる国のようです。
(日本では、薬局でシャンプーを買うのと同じように買えますが)
営業マン、テレビやマスコミを使ったCM、西欧の製品が優れているというコンプレックス、医師、看護師への働きかけで、乳児用人工乳は世界中で売れている。日本でも企業名は違い、国産品ではあるが同様の状況だ。ただ、清潔な水が手に入りやすいので大きな問題になっていないだけだと思う。
この映画で取り上げられていたことは知っていたが、えげつない多国籍企業と闘った内部告発者がいたことは知らなかった。
スノーデンさんと共通していたのは、自分の信念に忠実であること。
罪の無い乳幼児
罪のない乳幼児が犠牲になるのは心が痛みます。しかし、巨大企業が相手では簡単に解決しないのも事実であり、世の中には不条理なことが沢山あります。弱肉強食が良いとは思いませんがそれも現実。私自身も過去に正義を振りかざした時期もありましたが、今は結局長い物には巻かれています。故に告発できる主人公と、それを映画化した監督には脱帽。いろいろ考えさせられる作品であることは間違いない。
2017-51
●本作はただの企業告発映画ではない。
かつては欧米列強国が世界を武力で植民地化。今度はグローバル企業が世界を経済力で征服。
もちろん、最先端技術・製品が世界に普及することは悪いことじゃない。企業に倫理観があれば。
知らなかったけど、人工ミルクはWHOコードに指定されていて、規制してる国も数多い。
主人公は大手外資系に転職。営業成績も人間関係も良好。だが、自社商品で赤ん坊が無残に死んでることを知らされる。これに耐えきれず会社を去る。ツライな。天国から地獄。
問題はこっからだ。WHOコードは1980年代に採択(日本は棄権)。
70年代のボイコットの結果だ。しかし本作は90年代のお話。
さらに商業ベースの公開は、2017年の日本が世界初。制作から3年後。
ん?この話の後に、ボイコットが起きて採択されたんじゃないの?
調べてみると、この企業と主人公の主張は食い違うし、なんだか白黒はっきりしない。
それでも本作の公開が日の目を見たのは、関係者の尽力と強い意志があったからだと思う。
推測だが、本件はパキスタンだけの問題ではない。似たような環境の国々は多いだろう。
それに、この企業だけが人工ミルクを売ってるわけではないはずだ。
現在進行形の悲劇がなくなって、ひとりでも多くの赤ん坊が救われる世の中になることを切に願う。
これが発展途上国の現状
誰もが知るあの企業が、昔あんなことをしてたのかと、驚きました。赤ん坊の命より、利益を優先する企業なんだと、ガッカリしました。
そんな最低な企業を訴えた主人公の物語。これがパキスタンの現状かと感じさせられる。発展途上国は、ここまでひどい環境なのかと思う。この映画を観た後は、色々考えさせられる。
大企業と戦うのは難しいなあ
ドキュメンタリーをつくるスタイルで映画は、はじまる。ちらっと実名を出しあとは、架空の企業名にするところが作品の厳しさを感じさせた。ナイロビの蜂やダーウィンの悪夢とか同様 すんだ話なのか?ラストの重さが、現実を感じた。
汚れているのはミルクか人の心か
誰もが聞いたことのある大手企業が隠蔽や脅迫、賄賂といった犯罪行為を平然と行っているという現状を克明に描いている作品。
主人公とその家族の幸せな家庭を描く序盤と、その幸せが奪われていく終盤とのギャップが心苦しいです。
真実を暴こうと主人公が奔走するほど、商売が上手くいかなくなるという理由から迫害される描写は人の心の汚い部分を浮き彫りにしていました。
人の倫理観を考えさせられる切ない作品です。
映画を観る前に知っておきたいこと
『Lucky Now』というサイトをご覧になってください。
初めてこういうものがあることを知りました。
これから映画を見る前には、積極的に参考にさせていただきたいと思いました。
知識を持った上でこの映画を見ると、より一層深く映画について考えさせられると思います。
まさかテロが影響しているとは。
インフラ整備の遅れによる水質汚染、タリバンによる女子教育の禁止という背景を初めて知りました。
女子教育の普及率の低さ=母親の識字率の低さ。
内部告発された会社は、決して毒物をつくっているわけではありません。
責任は消費者の判断にある、と考えることもできます。
じゃあ 粉ミルクを我慢して母乳で、って思いました。
しかし、現地では12歳まで粉ミルクをとる習慣があるということを知りました。
問題が発覚したのが20年前。
そして映画がつくられたのが3年前。
初めて公開されたのが今年になって。
しかも日本で。
思った以上に、公開するには障壁の高い映画なのでしょう。
よくぞ上映してくれたと思いました。
とても重要な問題提起を世の中に起こした価値ある映画だと思います。
日本に関係ないじゃないかと思うかもしれません。
しかし、糾弾された会社に代わって、今パキスタンへ粉ミルク販売に台頭してきたのが、森永や明治乳業だそうです。
自分がこの企業の社員だったら…果たして、内部告発なんてするのだろうか?
1回見ただけでは話の流れを掴むのが難しい。
この作品のスタッフが制作した「めぐり会わせのお弁当」は、非常に素晴らしかった。今回の「よごれた? けがれた?ミルク」は、ある企業の営業マンがトップセールスマンになっていくが、その企業が売る粉ミルクが、多くの子供たちを苦しめている。
実話であるらしい。であるならば、(『キネマ旬報』に既に記載されておりますが…)ノンフィクションではなくドキュメンタリー作品として描いたほうが、作品により真実味が浮き上がってきて良かったと思います。大変申し訳ないが、男性が皆同じような容貌で誰が誰であるか時々判らなくなり、映画の内容を理解するのが難しかった。1回だけ観覧しただけでは、話の流れが判らずらかった。
WHOコード
この映画はホントにあった話で、現在進行形。
日本はWHOコードを守らない国だから、同様の事が未だ行なわれている。
日本国内の開業医に対して、分娩台をプレゼントしたり、学会や、納涼会の飲食費をミルク会社は営業と称して提供している。
そして、そのお金は現在インフラの整わないアジア各国に販売攻勢をかけている日本のミルク会社の利益によるもの。
日本でも、未だ調乳指導としてミルク会社が病院に販売戦略をしいていることを日本人も自覚した方が良い。
ミルクを悪者にしているのではなく、企業倫理の問題。
WHOコードについて、国内でも法制化するべきと思うし、この映画は医師や病院関係者が観て欲しい作品である。
衝撃的な企業名だったな。
この事件、よく知らなかったので…。
映画が全てではないと思うけど、商品を拡散した企業が悪いのか誤った使用方法を続ける消費者が悪いのか、それ以前に発展途上国にも販路を広げた企業が悪いと思うけれど…。
大企業相手に闘う事の難しさと危険さと家族の誠実さと。コンパクトに上手くまとまった作品と思いました。
一方的
粉ミルクの間違った用法により沢山の子供の命が危険にさらされている事実を元セールスマンが告発した出来事を、取材、撮影する様子を通して回顧録的にみせる作品。
告発により本人はもちろん、家族にまで及ぶ身の危険。
そんな中で励まし、勇気づける家族達は良かったけど…後先もそうだし、物事を深く考えない主人公に少しがっかり。
事実に基くからとか抜きにして、話が二転三転しテンポも良くて映画としても良かった。
医師や薬剤師の収賄により拡販し知識や教養のない親が、薄いミルクや不衛生な水でつくったミルクを子供に与え、栄養失調や内蔵疾患が起きている。
確かにこれは問題だけど、果たして本当に粉ミルクが悪いのか?
粉ミルクを製造販売した会社が悪いのか?
収賄云々は別として、医者は何も説明していなかったのか?
あまりにも子供に与えるものにテキトーな親の問題は?
難しい問題だけど、少し偏り過ぎている様に感じた。
巨大なグローバル企業が販売するミルクについて、内部告発をした社員と...
巨大なグローバル企業が販売するミルクについて、内部告発をした社員とその家族の人生を描いたドラマである。
告発した事実も驚愕であったが、告発を行った主人公のその後の人生にも驚いた。苦しい思いで見た。
そして大きな拍手を送りたくなった。主人公だけでなく、彼の家族に対しても。
この映画が事実に基づいており、1997年の事実発覚から映画製作が実現するまでの長い時間、そして2014年完成以来我が国が初めての公開国になることを今回初めて知った。
多くの人に観てもらいたい映画である。
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