「空海ミステリー 妖猫と貴妃」空海 KU-KAI 美しき王妃の謎 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
空海ミステリー 妖猫と貴妃
チェン・カイコーが描く、空海。
あの『さらば、わが愛/覇王別姫』や『始皇帝暗殺』を手掛けた名匠なのだから、どんな歴史絵巻になるのかと思ったら…、
こりゃ~びっくり!
まさかの妖奇ファンタジー!
だって、のっけから黒猫が喋るんだもの…。
原作は『陰陽師』の夢枕獏。そりゃそうなるわな…。
でも、考え方によっちゃあこれで良かったかもしれない。
勿論期待していたのは空海の生涯を描く正統派の作品であったが、もしそうだったら、見応えはあるが小難しそう…。ダレずに見れていたか…?
一方、本作は…
8世紀、唐に渡った若き空海が、後の大詩人・白楽天と共に、都を脅かす怪事件の謎を解き明かす…というもの。
空海と白楽天がさながらホームズとワトソンのような、謎解きミステリー×バディ・ムービー。
話の方も、原題『妖猫傳』通り一連の事件の鍵を握る黒猫の存在とその正体、50年前の楊貴妃の死、その真相にまつわる秘められた悲恋…なかなか悲劇的。
歴史背景はほとんど知らないし(白楽天って誰やねん!?)、ツッコミ所は勿論あるし、さすがに中弛みもしたが、ドラマチックな妖奇ファンタジー・ミステリーとしてそれなりに楽しめた。
建設に6年を費やしたという壮大なオープン・セットは圧巻。衣装も豪華絢爛。
VFXは思ってた以上に高クオリティー。フルCG妖猫はなかなかのもの。
セット、衣装、CGが最大限に活かされた幻術宴のシーンは映像映えする。
日中合作の大作でほぼ中国語で歴史上の人物という難役に挑んだ染谷将太の熱演。
実を言うと吹替で見たのだが(ゴメン、染谷クン…)、微妙な豪華吹替陣の中で唯一、妖猫の声の六平直政は凄みがあった。
ただ、話題のRADWIMPSの主題歌はあまり合ってなかったような…。
とは言え、どんなにヨイショしても採点は3が妥当。こればっかりは好みの問題。
賛否両論と言うか寧ろ酷評が圧倒的だが、もっとトンデモ駄作かと思ったら、言われるほど酷いもんではなかった。
要は『西遊記』や『陰陽師』のように実在の人物を題材にし、面白可笑しく脚色したエンタメ。
これはこれ。
…何だか、いつぞや書いた『グレートウォール』のレビューと同じ締め括りになってしまったが。