山(モンテ)のレビュー・感想・評価
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絶望的な挑戦を開始せよ。
人生の基調は退屈であり、絶望であるか?
実に退屈な映画ではある。絶望を生きる過程は単調であり、眠気を誘う。映画は現実逃避でもある。しかし、この作品は大胆にも観るものに現実の単調、退屈、絶望ありのまま突きつける。
あの圧倒する山が現代のグローバル資本主義の隠喩であれば、太陽の光を遮られた、孤立した彼は我々観るものひとりひとりとも言い換えられる。絶望的な挑戦を始めよと言葉にならないあのハンマーの反発音と絶叫が訴えている。
これは日本映画です(アミール・ナデリ監督曰く)
映画内容には直接触れません。上映後、アミール・ナデリ監督のトークショーあり。その内容を記しますが、結果的にネタバレします。
*モンテは、撮ろうとしている三作の中で、カットに次ぐ2本目。当初、日本で撮影しようとしてロケーションを探したが見つからず、断念。
*主役は、西島秀俊にしたかった。三本目は日本で撮りたい。西島さん主演で。
*この映画はイタリアで撮ったが、黒沢監督のあらゆるものの影響を受けており、日本映画だと思っている。
*山の崩落シーンは、50kgのダイナマイトを使ったリアル。麓の村の住民が不在の日を待って強行。
*山は北イタリアで標高3,000m越えの場所アルプ。スイスとオーストリアにも面している。
*山の崩落撮影後、三ヶ国からクレームが来た。日本に逃げて来て、西荻窪に住み編集していた。
*その間、毎日鎌倉の黒澤明の墓参りをして、良い編集ができるように拝んでいた。
*映画祭のためにベネチアに行った時は逮捕されるかと思っていたが、賞をもらった。
*音楽は使わなかった(実際、一切音楽無し)か、音を交響曲の様に使った。
*使った音は、山の山頂で録音したものを音源にした。
*キリスト像に背を向けて立ち去ったシーン以降、色が無くなるが、これはアゴスティーノの孤独感の深まりを表現している。
*監督自身にとっての山は Film making。企画、資金、場所、あれやこれや大変。
*ラストシーンで家族の姿が過去の姿に戻るのは、ナデリ監督の Gift だそうです。家族が死んだわけじゃ無いと。これ、パンフにサインもらいながら質問したら、答えて下さいました!
アミール・ナデリ監督は、本当に普通の話し好きなおじさんの印象。服装は、完全に日本の親父スタイル。気取りもなく、黒澤明へのリスペクト振り撒きまくり。もうね、日本に住んで日本映画界を刺激してください。と、土下座してお願いしたくなりました。
シンプルかつパワフルで素晴らしい傑作
シンプルかつパワフルで素晴らしい傑作。特に照明とサウンドデザインが素晴らしく、どのように見るべきか、感じるべきか、常に光と音が指し示してくれる。映画館で見るべき。
怨念の山は
まずは山の上の集落が幽霊屋敷にしかみえなく、そそり立つその集落民をいじめる山というか岩山の佇まいが素晴らしい。そして怒りを通り越した怨念を狂ったように岩山にぶつけていくと、、とんでもないことが起こる。
「飢餓海峡」的にいうと、「怨念山脈」みたいな。
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