「映画だからこそ」昼顔 こやさんの映画レビュー(感想・評価)
映画だからこそ
ドラマから見ていた者です。
映画ではきっと幸せになってくれる。そう思い観に行きました。
再び出会う紗和と北野はただ蛍を見て会話もせず肉体関係を持つことも無く一緒にいられる時間を大切に楽しんでいました。この時点でやはり2人は心のどこかでずっと思い合っていたと感じました。
乃里子に関係がバレてからの幸せな日々。
それでも北野のことが信じきれず愚痴を零しオーナーに一喝され周りにも責められ、自分のしている事の罪の重さに改めて気付く紗和。
北野のことが信じきれないという部分では紗和も乃里子も似ていると思いました。
思い切ってお互いの相手(と呼んでいいものか)に会いに行くシーンで2人の覚悟が垣間見えました。
最後のお願いを断られた時の乃里子の、怒りを噛み締めるような表情を見て完璧に許したわけではないと悟りました。
ここでお願いを断らなければ未来が変わっていたとも思います。
約束の朝、漸く「好き」と口に出しそうになって飲み込んだ北野を見て結末がわかりました。
せめてここで好きだと言ってあげてほしかった。
最後凶行に走ってしまった乃里子の狂気と執念は北野の曖昧な優しさ、紗和の貪欲さによって生まれたと思いました。
7階から落ちても脊髄損傷で済み、尚且つ助手席にいた北野は即死だったにも関わらず乃里子は松葉杖程度。遺品に離婚届がなかったことからも妻として、女としての執念を感じました。
北野がわからない、けれど紗和のことが好きと乃里子に言い亡くなっていきましたが最後まで残酷だと思いました。
1番聞きたくない言葉を言われた乃里子と、1番聞きたかった言葉を聞けなかった紗和。
1番欲しかった子供を授かる事が出来ない代わりに妻の座を守り通した乃里子。
1番欲しかった北野と一緒にいることは出来ない代わりに愛する人の子供を授かった紗和。
2人共残酷なまでに北野を求めた結果1番欲しいものは手に入りませんでした。
乃里子が最後笑っていたシーンはゾッとしましたし、紗和に指輪は渡ってほしかった。
個人的に最後の子供のシーンより、紗和が最後あの場を訪れたシーンが見たかったです。
不倫はいけないことだとわかっていますが2人の愛は本物だと思いますし、映画だからこそ慎ましやかに結ばれてほしかったです。
せめて好きだと、指輪を渡してほしかったです。あまりにも残酷な結果で涙も出ません。