ハローグッバイのレビュー・感想・評価
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ちょっと長い
60分が丁度いい話なのではないかと思う。
女子高生の話なのだがカメラは彼女達の青春とは冷徹なほど距離を保ち、人間の本音と建前を浮かび上がらせる事に終始している。自分から見ると、まだ本当の社会を知らない年頃の人達相手に冷徹すぎるのではないかという気がしてしまう。スクールカーストの中にある権力関係を丁寧に拾い上げていると言うこともできるが、撮影の形式がサクッと済む説明描写を長引かせているとも言える。
客観的さ、長さを退屈に感じてしまうので、美少女である委員長がただ委員長であるという理由で疎んじられているこの学校という世界観にすら疑いが湧いてくる。
委員長の万引きがハヅキにバレるシーン、演出が違うんじゃないかという気がする。ハヅキの妊娠が勘違いだった事で委員長がハヅキを慰めるのが唐突で、あそこまで喧嘩しておいて?と見えた。基本的に委員長はいい子である前提にしても。
また、ハヅキが女子トイレで自分の噂を聞いて、友達を食堂に誘ってというくだりも、そんなめんどくさい友達関係なんなら本当に妊娠してたってウソついて騙してやるくらいしてやってもいいじゃんと思った。その後、ラインのやり取りからモノローグの嵐が立ち上がってきて友達地獄が表現されて、委員長のもとに行くというのはあまりに説明的で、説明でしかない。高校生くらいの観客にはウケるだろうけど、そこで狙うなら最初からこの撮り方しなきゃいいような気も。友情の芽生えがあったときにハヅキの行動が変わってきてという飛躍が生まれてほしい。ぼっちとの友情を小さなピカレスクとして表現することもできたと思う。
案の定というか、老いも若きも友情がテーマの話なのに結局2人の友情はどうなるのか分からないラストなのだけど、ハヅキが委員長のために自分も万引きで捕まるくらいの青春感が欲しいと期待してしまった。たかだか万引きで学校中の槍玉にあげられる委員長アオイが可哀想である。
若い人
キネマイクスピアリにて鑑賞。シネマイクスピアリさん、ありがとうございます。
まず、最初のシーン。萩原さん演じるはづきが建物内をこちらに向かって歩いて来ます。この時、後ろの建物外は晴れて明るい。
そして、オープニングの最後、校舎内の階段。暗い下の階から上って、明るい所まで来た時に笑顔を作る。なるのではなくて、作る。
さり気ないんだけど、印象的なオープニングでした。
そして、この後も明るい場所でのシーンは作った表情や上辺の会話が、暗い場所でのシーンは素になる事が多くなっている気がしました。
映画だと日の光って、笑顔を輝かせるのに使われる物だと思っていたけど、輝きのない笑顔に使うのって面白いなと感じました。
ここから感想です。
この映画のテーマと思われる友情からは、ズレている感想かもしれませんが。
高校生の頃って、世界が狭いじゃないですか。それで、外の世界に触れたりすると成長を見せたりする。
この映画の場合、おばあちゃんを通しての外の世界。
何かを成し遂げる喜び、それでも突き付けられる厳しい現実、それらを経験する事で今まで見えなかった物が見えて来る。
そうやって成長する事で、暗い世界や頑張って明るくしていた世界から踏み出す勇気が持てる。
でも、逆に言うと外の世界が見えないと、狭い世界から抜け出す勇気が持ちにくいかな・・・。
苦しんでる若い人には、世界は広い事を頭の片隅に置いておいて欲しいな。
なんて考えちゃいました。
あと、もう一言。
その時は上辺だけに感じる言葉も、時が経つと本当に心配してくれていたんだと気付く事もあるかな。
なんかレビューの後半、映画から離れちゃってる気もするけど、いろいろ考えさせられるのも映画の力なんだと思います。
個人的感想と言うか妄想
ラストにはづきが葵の前を通り過ぎてそのまま校舎を出て学校を出ようとしたのはおそらく妊娠してなかったというのが嘘で病院へ行こうとしていたのだと自分は解釈した。
最初に観た時ははづきの側からしかその事を想像していなかったが2回目はその時の葵の様子に注視してみた。葵ははづきが目の前を通り過ぎた後教室のベランダに出てあのメロディーを口ずさんでいた。それが聴こえたのかどうか二人の現実の距離関係はわからないがはづきはおそらく葵がいるであろう方を振り向き仰ぎ見た。
その事からもしかしたら妊娠が無かったと言われた時に葵は一度その言葉を信じたが、そのあと手紙を渡しに行き名前を呼び合いグッバイするまでの間に妊娠してないと言ったのが嘘ではないかとなんとなく気付いていたのではないかと思った。
何も言わずそのまま教室を後にしたはづきに二人の間にだけに解るあのメロディーで葵は気持ちを伝えていたのではないかと思った。
そしてはづきもあのメロディーが聴こえてきたときに葵は気付いていて無言のメッセージを送ってくれたと思ったのではないかと感じた。
はづきがやるべき事(堕胎か産むのかはわからないが)をやった後には、はづきと葵はハローするんだろうなと思った。というか妄想が過ぎるかな笑
自然な流れが凄い
良い映画って、俳優が演技をしていると思わせなくて、これからどうなるんだろう?って不思議な感覚を覚える。
同じクラスのはづきと葵。
はづきは元彼の子供ができているかもしれないと悩んでいた。
葵はいつもひとりぼっちの優等生。委員長でお嬢様だが、実は万引きの常習犯だった。
この二人が、ボケて徘徊していたお婆さんの悦子が階段で転んでいるところに出くわした。
はづきと葵は、これがきっかけで、お婆さんの手紙を届けることになる。
悦子が口ずさむ曲を茅野耕介がピアノで弾くシーンは、涙が溢れる。
最近、ラブコメやこれでもかと泣く映画が溢れているけど、二人の同級生の絆をお婆さんと3人で描く自然な映画。
終わり間際に、「安心して、明日から話しかけないから」もうこれで別々だからねと言って別れるが、そこが良い。
まるでバラッドのような映画だった。
横浜の伊勢佐木町のジャック&ベティでしかやってなかったけど、ほんとに観て良かった1本。
友情と恩讐の彼方
甘酸っぱい小品かな、と思って観に行きましたが、いい意味で裏切られました。しなやかで強い、観応えある素晴らしい作品。
一番印象に残っているのは、おばあちゃんの手紙の真実が明かされるクライマックスの場面です。ラブレターかと思いきや、友情を伝える恩讐を超えた赦しの手紙!ある意味最高のラブレターとも言えます。
シュローダーヘッズのピアノ、もたいまさこの朗読が相まって、本当に特別なシーンでした。深く深く心に刻まれ、震えるほど感動しました。
友情の描写も真を突いているように感じました。
はづきと葵の2人はつるむような友人関係にはならないけれど、その瞬間は確実に友情が存在していました。それは2人にとって確かな手応えがあり、かけがえのない体験になったはず。
特にはづきにとって、妊娠検査後に葵が寄り添ってくれたことは宝物となるでしょう。それが例え一瞬の交錯であっても、遊び仲間とは一線を画した関係です。
また、成長した葵が魅力的。ポニーテールにして自首し、停学後もビシッと登校する葵には誇り高く凛とした美しさがあります。
友情の話なので、はづきと葵の友情の対比として、はづきの友人グループが描かれています。
このようなグループのつきあいは、友人関係というよりも学校生活に適応するための仕事のように見えました。場の空気によって友人的振る舞いを強いられる印象で、義務に近いのでは。義務といってもかなり狭い世界への適応なので空虚なものですが。
SNSの言葉が音声となりはづきを押し潰そうとするシーンは、無意味な仕事をし続けて参ってしまったような印象。葵との友情と友人的グループの対比は、友情の厚さ・薄さではなく、意味の有無・価値の有無を表しているように感じました。
セピアがかった映像と、極上のピアノの旋律。
(テーマ曲『手紙が届けてくれたもの』は、菊次郎の夏のSummer に匹敵する名曲!)
実に品のある美しい傑作でした。主演の2人も美しい。時間も比較的コンパクトで、間延びも感じませんでした。短いけど、無駄がなく映画としてとても洗練されている印象です。
そして、シュローダーヘッズの音楽は以前から聴いていましたが、姿は初めて見ました。あまりにも男前でビックリ。今後も俳優イケますね。
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