「友達ってなんですか?」ハローグッバイ 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
友達ってなんですか?
観終えて、他の選択の中からこの映画を選んで良かったと思った。いや、途中でもうそう思っていた。
ともすれば淡々と進行するストーリーは、ただ目の前にいる高校生の日常を追いかけるような平坦な気分で流してしまいそうになる。しかし注意して眼で追っていれば、彼女たちの心情がとてもよく表情や態度に表れているのに気づく。まるで、思春期の娘をもつ親の気分でいるかのようだ。画質の柔らかさがまたそのいい手助けとなっていた。
また他のキャストの表情も実にいい。渡辺シュンスケの佇まいの誠実さ、渡辺真起子の労りを隠した微笑、もたいまさこの、あえての無表情。キャリアを経てこその名演だ。
おばあちゃんの口ずさむメロディ、渡そうとして渡せないままの手紙、その訳が明らかになる場面では、涙をこらえ切れなかった。おばあちゃん、あなたはその想いだけはボケても忘れることがなかったのですね、と。
そしてなぜか、かつて自分がしてしまった嘘や馴れ合いや無関心が、正体もなく心に蘇ってきて胸が苦しくなった。
友達ってなんですか?、と問う。
いつも一緒に遊んでいること?、LINEで繋がっていること?、同年代?、クラスメイト?、、、全部否定された気分になった。つるんだリしなくても、心が通う相手ならば友達と呼べるんじゃない?、そんなラストがとても美しかった。
繊細で脆くて愛おしい、そんな大事にしておきたい映画だった。
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