「事件の全容が決着したかに見えて、何度もひっくり返されていくラストにびっくり!」ブラック・ファイル 野心の代償 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
事件の全容が決着したかに見えて、何度もひっくり返されていくラストにびっくり!
一見すると巨大製薬会社の不正行為を暴く弁護士の活躍を描く作品に見えてしまうけど実は、ドロドロした人間ドラマであり、浮気の代償というものが時にこんなとんでもないことになるのかと思い知らされる痛烈な作品です。
野心家弁護士の主人公は、巨大製薬会社の不正行為を暴くため、その会社社長の愛人であるブロンド美女から、機密ファイルを受け取ります。しかしこの美女はとんだ喰わせもの。元恋人だった主人公を誘惑するのです。まるでパンドラの箱が開いたように、その出会いをきっかけに、人間達のありとあらゆる欲望<出世欲・金欲・独占欲・愛欲…>がむき出しになって主人公に襲いかかり、その人生は予想もつかない意外な展開に巻き込まれていくことになっていきます。
その美女が謎の死を遂げます。主人公は弁護士としての出世どころか殺人容疑者の濡れ衣を着せられ、警察に追われる身に。警察の捜査を巧みにかわしつつ主人公は、美女殺害の真相を求めて、製薬会社社長宅に侵入します。直接対決するシーンは緊迫感抜群でした。
それで一見落着したかのように見えた本作。しかし主人公は全然納得せず、さらには主人公を付け狙うヒットマンがその正体をあらわにするのです。
製薬会社の不正隠ぺいも、社長の愛人殺害も、いかにも悪そうなアンソニー・ホプキンスが当然関与していそうに見えます('◇')ゞ
ただその陰で善人面してほくそ笑む黒幕の存在がいるからこそのヒットマンの暗躍なのでしょう。
本当に意外な黒幕。そして自殺説も浮上する美女殺しの意外な真犯人には、ぶったまげました。事件の全容が決着したかに見えて、何度もひっくり返されていくラスト。これは全く予想不能などんでん返しだけど、言われてみれば納得の結末でした。
物語は、全米を牛耳る巨大製薬会社 ピアソン製薬の悪事から始まります。ピアソン製薬は、CEOアーサー・デニング(アンソニー・ホプキンス)の下、新薬の治験結果を捏造し、多額の利益を得ていました。メディアから激しい追求を受けていましたが、決定的な証拠が無く、その不正行為は野放しのままだったのです。
一方ベン・ケイヒル(ジョシュ・デュアメル)は、ニューオーリンズにある一流弁護士事務所に勤める野心家の弁護士。医師として激務に励む妻シャーロット(アリス・イヴ)とともに暮らしていました。でも、流産をきっかけに夫婦仲は冷え切っており、仕事に打ち込むことでその悲しみを忘れようとしていたのです。
そんなある日、ベンのSNSに一通の友達リクエストが届きます。相手はエミリー・ハインズ(マリン・アッカーマン)でした。男なら誰もが振り向く金髪美女で、ベンの元恋人だったのです。友達リクエストを承認すると早速メッセージが届き、10年ぶりの再会を果たします。ベンはそこで思いもよらぬ事実を知ります。エミリーはピアソン製薬に勤めており、CEOのデニングとは愛人関係であるというのです。さらに、不正行為の決定的な証拠である機密ファイルを渡すと持ちかけられます。世間の注目を浴びている事件を担当し、勝訴すれば、昇進するだけでなく知名度も格段に上がるだろうと、ベンの野心に火がつきました。
機密ファイルを受け取るためにエミリーの部屋を訪れるベン。そんな彼をエミリーは妖艶に誘います。誘惑に負け、キスをするふたり。しかし、ベンは我に返り、機密ファイルを手に部屋を後にします。 翌日、ベンは弁護士事務所の代表チャールズ・エイブラムス(アル・パチーノ)に、ピアソン製薬に対し訴訟を起こすよう持ちかけます。機密ファイルを提示し、「正義のためなら手を汚せる弁護士が必要」と熱弁するのです。彼の熱意を認めたエイブラムスは訴訟に同意。慌ただしく準備が始まります。
しかし、この訴訟をきっかけにベンの周囲を謎の男(イ・ビョンホン)が嗅ぎまわり、訴訟から手を引かなければ妻シャーロットに危害を加えると脅迫を始めるのです。また、デニングのもとには一通のメールが届き、そこには血だらけになったエミリーの写真とともに「12時間後に女を殺す」というメッセージが添えられていたのでした。
ベン、デニング、エイブラムス、謎の男、シャーロット、エミリー。それぞれの欲望と野心が絡み合い、人生の歯車が狂いだします。騙し合いに翻弄されたベンがたどり着く、戦慄のラストとは―?