「事実も小説も奇なり」笑う故郷 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
事実も小説も奇なり
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ヒスパニック系映画が続くのだが、今作品も又大変秀逸な内容である。特に一筋縄ではいかない主人公の作家とその生まれ故郷の人達との抜き差しならぬ交わりは、観ていてスリリングすら感じさせる。プロット自体はそれ程斬新ではないのだが、とはいえ所謂『勝ち組』だが皮肉屋の人間を主人公に据え、だが『錦を飾る』体で向かった故郷の人達は、表向き歓迎はしているが、それぞれの思惑が色濃く滲み出ているし、共にやっかみや嫌悪、主人公を利用してやりたい連中も又纏わり付いて、どんどん主人公に同情するようにシークエンスが進行してゆく。積極的な女の子は実は友人の娘であるとかの伏線もきちんと効いていて、これもストーリーに彩りを与えている。あんなに味方でであった友人は、実は妻の元彼である主人公に未だに嫉妬を拗らせていて、終盤のヒリヒリした『イノシシ狩り』のシーンは、主人公に憐憫をしてしまったのである。
だが、結局は主人公はこれも又小説の題材として、どっこい利用してしまうという中々のオチで幕を閉じる。最後のフラッシュを浴びての主人公の卑しい笑顔が、勝ち組の重要要素である『虚栄心』を見事に使い、成功したのである。
展開のスピーディーさ、登場人物の数の丁度良さ等々、コンパクトにそれでいて上手く膨らませる構造に唸るばかりである。人間の本質を秀逸に引き出し、演出をした監督に脱帽である。これこそ邦画では産まれない内容であろう。
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