劇場公開日 2016年12月24日

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「剣を持つ理由」こころに剣士を フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

剣を持つ理由

2017年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

元ドイツ軍人が田舎でフェンシングを教える話

美しいピアノの曲と主人公の影のある表情がたまらない作品でした。

最初のシーンを初め、主人公の後ろ姿を映す画が多いのだが、この演出がとてもいい。
どんな表情をしているのか想像に任せているし、背中を通して見える風景は観客と主人公を同化させ、物語に引きずり込まれる。

主人公は逃亡中のため、極力目立たぬように努めているので、感情を面に出さないし、髭で表情が分かりにくい。これから一生ひっそりと暮らさねばならない哀愁ただよう表情が素晴らしかった。

対照的にヒロインは美人で表情豊、教え子達は元気でかわいい、交流により暗かった主人公が徐々に明るくなりはじめる展開は誰が心温まるだろう。

共産主義の怖さ、輪を乱す者の排除は冷たく恐ろしいものだと言う事実も描かれているし、それでも決意して大会に出る主人公の勇気は計り知れない。
教え子の信頼を裏切りたくない、練習の成果を発揮してもらいたい。
子供嫌いの主人公の心境の変化と、剣士として教育者としての魂が彼の背中を押す。

映画評論家の町山智浩さんが言っていたが「でも、やるんだよ」の精神に人は感動する。
まさにこの映画はそれだった。

大会には出してあげたい、だが秘密警察に捕まるかも知れない。必ず行く必要がある訳でもない。でも、やるんだ、子供たちのため、自分の心のために。

スポ魂映画の熱い展開は少な目だが、静かに練習する冷たいスポ魂映画だったように思る。ただ表面には見えずとも内側には熱い魂のやどった映画だった。

劇中セリフより

「戦うために来たんだろ」

無理だと諦めて帰ってしまうのは勿体ない、機会があるなら挑め

踏み出せない時、背中を押してくれる人が傍にいるのは何と心強い事か。一人で戦っている訳ではない、誰かに頼ることも大事だと思った。

フリント