こころに剣士をのレビュー・感想・評価
全18件を表示
剣士、といっても暴力としての剣は振るわない。
厳しい状況に立ち向かっていく矜持や、精神的な強さの象徴としての剣というふうに捉えた。
子供達も、そして自分も変わっていくのは、ある種定番的なストーリーではあるが、いくらでもあざとく劇的にできそうなのを、上手く抑制されていて、厳しい冬の寒さを和らげる、暖かいお話だった。
二本立て二本目。実話ベースで重みあり。エストニア🇪🇪の微妙な立ち位...
二本立て二本目。実話ベースで重みあり。エストニア🇪🇪の微妙な立ち位置、初めて知りました。
親子のような師弟愛、スポ根要素もあり、そして無垢なラブシーン。素敵な作品でした。
エンディングテロップ「いまもまだ…」晴れ晴れとした気持ちにさせてくれました。
今日の二本は同監督作品なんですね。クラウス・ハロ。この監督、只者ではありません。今後、要注目です。
もう逃げない!
珍しいフェンシング映画。しかもエストニアが舞台という、これまた珍しい作品。戦後混乱期であるがため、田舎のハープサルも両親がいない子供や街にも活気がない様子。冬から始まるために、明るささえない映像なのだ。体育教師として赴任してきたエンデル・ネリスもワケアリで、身を隠すために教師という身分を手に入れたに過ぎない。
バルト三国のひとつであり、高校の頃は無我夢中で意味もわからず「エストニア、ラトビア、リトアニア」と丸暗記したことが懐かしい。第二次大戦ではドイツとロシアにはさまれた国はとかく悲惨な状況だったと後に知ったが、ドイツ軍として徴用された兵士だって同様だ。主人公エンデルは脱走兵でもあり故郷を愛していたに違いない。
そんな状況であっても子どもたちにフェンシングを教える喜びを感じられるようになり、カドリという女性とも恋に落ちた。人生は輝かしい。マルタやヤーンのように純粋にスポーツに興ずる姿も美しいし、親友に援助を求めて、それに応じてくれるところにも感涙しました。
台詞の少ない後半。エンデルの過去に疑念を抱く校長、常に秘密警察に狙われているという恐怖、それよりも純粋に大会に出たいと訴えてくる少年少女に望みを託すのだった。補欠だったマルタの姿にも泣けるのですが、ぎりぎりになって電気剣や防具を貸してくれたチームが応援してくれる様子にボロ泣き状態に・・・
最後になって実話なんだと知らされ、映画の力はすごいな!と感じました。「逃げない」と心を後押ししてくれたのは初めての試合に臨む生徒たちの力だったし、収監されてもしばらくしてスターリンが死んだのも彼らの力だったのかもしれません(そんなばかな・・・)。
剣を持つ理由
元ドイツ軍人が田舎でフェンシングを教える話
美しいピアノの曲と主人公の影のある表情がたまらない作品でした。
最初のシーンを初め、主人公の後ろ姿を映す画が多いのだが、この演出がとてもいい。
どんな表情をしているのか想像に任せているし、背中を通して見える風景は観客と主人公を同化させ、物語に引きずり込まれる。
主人公は逃亡中のため、極力目立たぬように努めているので、感情を面に出さないし、髭で表情が分かりにくい。これから一生ひっそりと暮らさねばならない哀愁ただよう表情が素晴らしかった。
対照的にヒロインは美人で表情豊、教え子達は元気でかわいい、交流により暗かった主人公が徐々に明るくなりはじめる展開は誰が心温まるだろう。
共産主義の怖さ、輪を乱す者の排除は冷たく恐ろしいものだと言う事実も描かれているし、それでも決意して大会に出る主人公の勇気は計り知れない。
教え子の信頼を裏切りたくない、練習の成果を発揮してもらいたい。
子供嫌いの主人公の心境の変化と、剣士として教育者としての魂が彼の背中を押す。
映画評論家の町山智浩さんが言っていたが「でも、やるんだよ」の精神に人は感動する。
まさにこの映画はそれだった。
大会には出してあげたい、だが秘密警察に捕まるかも知れない。必ず行く必要がある訳でもない。でも、やるんだ、子供たちのため、自分の心のために。
スポ魂映画の熱い展開は少な目だが、静かに練習する冷たいスポ魂映画だったように思る。ただ表面には見えずとも内側には熱い魂のやどった映画だった。
劇中セリフより
「戦うために来たんだろ」
無理だと諦めて帰ってしまうのは勿体ない、機会があるなら挑め
踏み出せない時、背中を押してくれる人が傍にいるのは何と心強い事か。一人で戦っている訳ではない、誰かに頼ることも大事だと思った。
静かな北の国で
フェンシングの事は何も知らないのですが、ヨーロッパでは昔から人気のあるスポーツなのかなと思いました。女の子も男子と闘うのですね。かっこいいな…
子どもたち、俳優さんたちの演技がとても自然で良かったです。
北の国の空や雪、霧、雨、など自然の風景も素晴らしかった。
戦争の傷、密告や弾圧のある暗い時代だけれど、人はささやかな希望を持って生きていたことがわかります。
いい映画だ
最近、よく映画館に行くようになったので、日記としてレビューなるものを書いてみようと思い、映画.com での初めてのレビューです。
冷たさと静けさの中だけに心の暖かさが際立つ。
父が連れて行かれた子供たちと逃げ続ける男の出会い、子供たちとの連帯、試合を経験させてやりたいという気持ちが、収容所に入れられる恐怖心を上回る。その流れがスムーズに受け入れられるのも、冷たさ・静けさの中だからこそと思う。
スターリン時代のソビエト、怖かったんだなあ〜。
なのにこの映画が恐怖感の映画でないのは、子供たちの演技のおかげ。大げさな喜びがない、極めて抑えた演技だからこそ溢れ出す情愛、喜び。
いやあ、いい映画だ!!
騎手の心
フェンシング好きにはたまらない。
歴史背景に詳しくないので、多分そうなんだろうな。と想像しながら見ている部分はありました。
試合シーンから涙が止まらなくなってしまいました。
最後のシーンでホットしました。
純粋な子供の気持ちには勝てないよねー。
実話ベースでした。
どこの国にも戦争によって人生を変えられちゃう理不尽な状況がいくらでも発生しているんだな、と改めて痛感。
秘密警察に追われながら、身を隠して田舎の先生になりながら子供たちの熱い思いに逆らえず命の危険にさらされながらも彼らの夢と希望に応える姿に感動。フェンシングの思いもよらない緊迫感ただよう試合シーンもナイス。
じっくり引き込まれる作品でした。
野球マンガを…
2017-04
子どもたちがとにかくかわいかった。あと個人の意思を超えて国の決めたことに一人ひとりの人生が左右されるというのを見ていて、この世界の片隅にをまた思い出したりした。悲しい。
けど、練習試合もほとんどしてなくてルールすらもあやうい子たちがいきなり優勝(しかも補欠のごほうび選出みたいな女の子がとどめw)ってのはさすがにな〜ROOKIESか?wと。事実に即してるってのはここは含まれないんだろうなぁなんてそんなことが印象に残ってしまった。
北欧の厳しい冬の時代
最近、ヨーロッパの映画を以前より多く観るようになって思うのは、やっぱりどの国にも歴史があって、暗い影を落としていた時代があるということ。今回「こころに剣士を」という映画を見て、ドイツとスターリンに翻弄されたエストニアの歴史の闇を垣間見た気がした。
第二次世界大戦中にドイツ軍にいたことから、エストニアがロシアの支配下となった現在では秘密警察に追われる身となってしまった元フェンシング選手の主人公が、身元を隠しながら小学校の体育教師として子供たちにフェンシングを教えていく。そして学校に通う子供たちの父親も、主人公と同じように身を追われシベリアへ送られてしまったという孤独を抱えている。
ぱっと見だけで言えば、出来の悪い子供たちに熱血教師が何かを指導して才能を開花させる物語に似て見える。「天使にラブソングを・・・2」や「グレート・ディベーター」や「奇跡の教室」などを連想させないこともない。またそういう視点で捉えると、少々ご都合的なストーリーにも思える。保護者がフェンシング指導に満場一致で賛同するのはあまりにも呆気ないし(これは学校側が頭が固すぎただけで当然のことなのだが)、まったくの初心者が大会で優勝できるほどの練習と指導があったようには見えなかったり、細部に粗が見えないこともない。
しかし、身元を隠して苦手な子供の指導をしながら何かを感じ始める男と、父親を社会に奪われてしまった子供たちがフェンシング指導を通じてふと父性に触れる、そんな暗い歴史の中の一市民たちの物語として捉えると、一気に深みを増していく。エストニアの歴史については(世界史に疎かった)私は不勉強で、正直知らないことだらけだった。ドイツ領からソ連領に支配の手が変わったことで人生と生活とが大きく変動したエストニアの歴史に関して、この映画から学ぶことも多く、やはり戦争や政治がいかに人の運命を変え狂わせ苦しめるかについて深く悩まされることになった。と同時に、フェンシングという競技が、自らに課せられた宿命に剣を立てて闘う彼らの姿と重なる気がして、とても感動的だった。随所で挿入される美しいロマンスにはほっこりと息が抜ける気がして、緊張の糸を温かくほぐしてくれるようだった。
映画として必ずしも器用ではないけれども、遠く離れた国の歴史を知り、それを自分自身に落とし込み、同じ悲しみを繰り返したくないと改めて思うきっかけとして、良い映画と出会ったと思った。
静かだが、心にしみる
訳ありの新任教師 実は、脱走兵なんやね。元フェンシングの選手 子供達にフェンシングを教える事になって。彼は、子供が苦手。子供は、大人の本心を見ることができるから。フィンランドの映画 フェンシングの試合でスターリンググランドへ行く事になり彼は動揺します。チクリの校長も嫌らしい公務員がよく出ていた。女性教師の素朴な美しさ、子供達の美しい瞳を見ていると真実に眼を背けてはいけないね。いい作品でした。
エンデル、君の選択は正しかったと思う。
邦題は、「一剣士」で良かったのではないだろうか。
しかし、作品自体は素晴らしく、親友であるアレクセイからのプレゼントに感動せずにはいられない。自分の身許をひた隠しにして、フェンシングを子供たちに教えるエンデルの熱意が伝わってきた。全国大会が開催されるレニングラードへ行けば、必ず捕まってしまうことは確実、それでも教え子たちを大会に出ることを決意する。話は、判りやすい出来ではあるが、私の好きな映画「フラガール」に通ずるものがあった。戦争の傷を自ら背負った彼は自分の人生と引き換えに(戦争を知らない?)これからの子供たちの未来を選んだ。子供は苦手であると言っていたのに。エンデルは、決して後悔していないはず。しかし。ラストの場面は蛇足かなぁ~。マルタの強い眼力が印象深かった。
試写会に行って来ました。1950年代のエストニアであった実話を元に...
試写会に行って来ました。1950年代のエストニアであった実話を元にした映画。静かで空虚のようだった前半から、その静かさはやがて熱を帯び、心動かされるものになっていきました。懸命に生きて、信念を持っていく事の難しさと美しさが丹念に描かれていたと思います。
時代背景や街、学校の思想の空虚さが子供たちから色んなものを奪っていたそんな光景が主人公と子供たちの熱で少しずつ変わっていく。
全てがハッピーエンドではなかったが、だからこそ彼等の心の中の葛藤や情熱が静かにでも確かに灯っている。
自由を奪われたエストニアで、希望を見いだしていく感動作
いつの時代もどこの国でも、悲しい歴史を作った大人たちに、子供たちはやり直すチャンスを与えてくれるものです。たとえそれがソ連併合によって祖国を失ってしまった終戦後のエストニアであったとしても…。
本作のように、未来を信じるかわいい子供たちの姿が示されると、ついつい感情移入してしまい、ホロリと感動してしまいがちになってしまいます。ヒューマンドラマで、子供の登場は、鉄板ものなんだなと思います。
そんな子供たちが、すべての大人に明日を生きる勇気をくれる希望の物語が本作なのです。訳あって秘密警察に追われる主人公の教師が、フェンシング部の教え子へ剣士としての心を伝えるため等に、身の危険も顧みず、全国大会の出場を決断するくだりに、グッときました。ラストシーンで温かい気持ちになれるお勧めしたい作品でした。
ちなみに本作は実話に基づく物語で、登場するフェンシング部は今でも継続しているそうです。
物語は、戦時中ドイツ軍に徴兵されたことで、ソ連の秘密警察に追われる身となっていたエンデルが、鞄一つで、エストニアの小さな町ハープサルに降り立ち、地元の小学校へ向かうところから始まります。身を隠すために田舎町の小学校に体育教師として志願したのでした。そんな彼をなんで都会からこんな田舎町へと不審を抱きながらも、校長は採用するのでした。
校長からは、突然運動クラブを開くようにいわれてエンデルは途方に暮れます。何しろ体育用具は、軍に寄贈されてほとんど残っていませんでした。
レニングラードでは有名なフェンシングの選手だったエンデルが一人で剣を振っていると、マルタが「教えてください」と目を輝かせて懇願するのでした。その真剣さに押されて、エンデルは、運動クラブをフェンシング・クラブとしてを開くことにします。
マルタは、小学3年生ぐらいのかわいい女の子。およそ剣士に似つかわしくない感じなのですが、ラストで大活躍します。またマルタがなぜクラブに参加したかったのか、あとでその理由が分かると、ホロリとさせられることでしょう。
約束の土曜日に体育館に現れたエンデルは、集まった子供たちの多さに面喰らいます。しかし、レッスンを始めても子供たちはおしゃべりをやめないし、野原の葦を染めて模造の“剣”を作っても、まともに構えることすらできなかったのです。
同僚の女教師のカドリに、「正直に、言うと、子供は苦手だ」と打ち明けるエンデル。カドリはエンデルに、スターリン政権に親を連れて行かれた子供たちも、何かに打ち込んでいる間だけはつらいことを忘れられると励ますのでした。学ぶことの歓びにキラキラと輝く子供たちの瞳が印象的です。
エンデルは「改めて基本からみっちり練習しよう」と張り切ります。勢い余って、力が入りすぎ上手くできないヤーンを厳しく叱ってしまうのです。涙を浮かべたヤーンの「先生は、本当は僕らが嫌いなんだろ」という言葉は、鮮烈でした。あまりに図星だったので、反省したエンデルは、ヤーンに「必ず君を剣士にしてやる」と約束するのでした。
ヤーン役の子役さんは、映画初出演という割りには、迫真の演技でしたね。
エンデルは子供たちに真っすぐに向き合い、それを受けた子供たちはみるみるうちに上達していきます。ところが、子供たちがエンデルを父親のように慕うことに嫉妬した校長が、「フェンシング部は認めない」と保護者会で中止を発表します。反対の大義名分に掲げたのは、フェンシングというスポーツは労働者階級に馴染まないというトンデモな理由だったのです。これだから社会主義は嫌いですね(^^ゞ
しかし、大学時代にフェンシング選手だったヤーンの祖父を始め、元気を取り戻した子供たちの姿に喜ぶ保護者たち全員が、エンデルを支持をしてクラブは存続することになります。
そんななかで、追っ手が近付きつつあることを心配した親友のアレクセイからシベリアでのコーチの仕事を紹介されるが、エンデルは子供たちを置いて行けないと断ってしまいます。剣士として、また教育者としての矜恃を大切にしているエンデルの信念を感じさせて、とても感動したシーンでした。そんなエンデルに、恋人になっていたカドリが、逃げるべきだと懇願するシーンもよかったです。父親を奪われた教え子たちが、父親代わりに慕っているエンデルまでまたソ連に奪われて、悲しい思いをさせたくないという気持ちからカドリは、シベリア逃亡を勧めたのでした。
一方、校長は教師の一人にエンデルの経歴を、詳しく調べるよう指示していました。
ある朝、登校すると、興奮した子供たちに囲まれるエンデル。新聞に案内が出ていたフェンシングの全国大会に出場したいというのです。しかし、レニングラードで開催されると聞いたエンデルは表情を雲らせ、「君たちにはまだ早い」と却下してしまいます。その心中は、秘密警察に捕まることを恐れて戸惑っていたのです。でもその背中を押したのは、「挑戦してみたい」と訴えるマルタと、祖父が政府に連行されて悲しみに暮れながらも懸命に練習を続けるヤーンの姿でした。
エンデルは、子供たちの夢を叶えようと決意し大会に出場すると宣言。子供たちを連れて、危険の待つレニングラードへと向かうのでした。果たして彼らを待ち受ける予想もしない出来事とは?遂に、子供たちとエンデルそれぞれの戦いが始まります。
主役のエンデルを演じるのは、エストニアでは知らぬ者のいないスター俳優マルト・アヴァンディ。本国では主にコメディ作品で絶大なる人気を得ていますが、本作では人間不信に陥った男が、親を奪われた子供たちとの交流で、人を愛し信じる心を収り戻していく姿を繊細に演じていて良かったと思います。
全18件を表示