「ひどい原作改変に絶望しました。」君の膵臓をたべたい(2017) 46nekoさんの映画レビュー(感想・評価)
ひどい原作改変に絶望しました。
私は住野よる先生の原作が大好きな人間です。よって映画のみ視聴した方々とは感想が違ってくることを先にお詫びします。
私ははっきり言って物語の結末を大きく変えたこの映画を許せません。この作品の主題は、「人は人との関係によって変わる」であると感じます。咲良と出会うことで、人との関係を持ちたがらなかった春樹は少しずつ咲良に心を開いていきます。さらに咲良が病気ではなく通り魔に刺されることで、春樹は「死は余命宣告された咲良でさえも唐突に、平等に訪れる」ということを悟ります。原作の春樹はそのことを思い知ったのち、すぐに恭子のもとを訪れ、共病文庫を渡し、咲良の病気のことを打ち明けたうえで、恭子と友達になろうと持ち掛けます。
一方映画の春樹は大人になるまで行動を起こしません。私はこの原作改変が許せない。これでは咲良が余命よりも前に死んだ意味がないと思いませんか?この映画において咲良の死は、「突然の別れで悲しい」という感情としてしか扱われません。「さあ、春樹に感情移入して泣くシーンだよ!」という雑な描写に使われたことが許せない。ただただ恋愛のキュンキュン(笑)と別れの悲しさを描いた安っぽい作品になぜしてしまったのか。若い高校生世代をターゲットにした作りなのは、キャスティングを見れば明らかです。そういう何も考えずに恋愛映画を見に来た視聴者の食い物にされたことが非常に残念です。また他のレビュアーの方が、「大人になる時間の必要性」について語っておられましたが、そんなゆっくりしている時間は無いのです、いらないのです。大人の春樹と恭子の描写は完全に蛇足であったと言わざるを得ません。原作を読まれた方々がこの映画に高評価をつける神経も分からない。一番大切で一番二人の関係が強いこの場面を簡単に省かれたのにもかかわらず...
以上です。ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。映画しか視聴していない皆様は、原作を拝読されることを強く推奨いたします。