「余計な事して感動し損ねた」君の膵臓をたべたい(2017) さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)
余計な事して感動し損ねた
毎度毎度思うのですが、
「ラスト、タイトルに涙する」というキャッチコピーは心底余計です。
住野よるのデビュー作にして代表作。
北村匠海演じる「僕」が桜良の「膵臓の病気でもうすぐ死ぬ」という"秘密"を知ってしまったことで桜良と交流していく物語で、主演の浜辺美波と北村匠海を人気俳優に押し上げたラブストーリー。
...一応。
浜辺美波演じる桜良は最初オーバーな感じが気になったのですが、後半になるにつれ慣れてきたのか、まぁ桜良に合ってる気がしたので良かったと思います。
そして、最終的に描きたかったテーマや一番ラストに込められた手紙を含めて「キミスイ」を通して描きたかった事は理解出来るのですが、結局そこに至るまでの過程にかなり問題があるように思えて結構嫌いな映画です。
まず、ネタバレ無しで嫌いな点を言っていくと、一つは北村匠海の演技です。
まだ役者として半人前な時だったのは理解出来ますが、「僕」の役柄に全く合ってないです。
そう思う一番の理由が彼がイケメン過ぎるところです。
「僕」は人と関わる事を避け、クラスの人達から誰にも話してもらえない冴えない高校生のはずなのに、全然冴えない感じに見えないです。
先日レビューした、同じ住野よる原作の映画「青くて痛くて脆い」で主人公を演じた吉沢亮は普段のイケメン度を丁度良く下げられていて、冴えない主人公を見事に熱演していました。
でもその点、北村匠海は格好良さを下げられていなくて、その上台詞回しも微妙なので終始違和感があります。
そして、北村匠海の大人になった姿は小栗旬には見えないです。
小栗旬に少しでも近づけるのであれば高杉真宙の方が良かった気がします。
あと、小説原作だからか、時々台詞が文語体のようで人の会話っぽく聞こえない時も多かったので、そこは自然になるように脚色した方が良かったと思います。
では、ここからネタバレ込みで話します。
まず、桜良の行動についてです。
「僕」に惹かれた理由はラストで明かされて、そこに関しては良かったのですが、行動があまりにも自分勝手で迷惑かけすぎてます。
確かに「自分が死ぬ」から好きなことをしたい気持ちは解りますが、「僕」と親しくなったことでクラスからイジメが起きたのにそれに関して知らん顔で半ば自己責任を押し付けるし、挙げ句自分の家では「イケないことしよう」みたいな事言って「僕」を挑発するし。
そういった行動をみる度に嫌悪感を抱きました。
あと、桜良の友達の恭子についてです。
中学生の時に友達が桜良しかいなかったと言ってるけど、高校の時は普通に他のクラスメイトと接してるから、「僕」に対して嫉妬してる理由が非常に弱く感じます。
何よりも納得いかないのが、桜良の死因が「通り魔」によって殺されるというもの。
小説も同じ展開だそうなのですが、これは本当に納得がいかないです!
これに関しては「死は突然訪れる」という悲劇を描きたかったのは解ります。ただ、「通り魔」に刺されて死亡という展開はあまりにも残酷過ぎるし後味が悪いので、「死は突然訪れる」というメッセージ性が伝わりにくいです。
このメッセージ性を貫きたいのであれば、責めて「主人公に会いに行く途中で病気が悪化し、それが原因で交通事故に巻き込まれる」みたいな展開の方がまだ納得いくし、メッセージ性も伝わります。
小栗旬や北川景子が出てくる12年後のストーリーも個人的にいらないです。
むしろ、恭子と「僕」が友達になる展開は12年後にやるんじゃなくて桜良が死んだ直後に友達になった方が物語として成り立つと思うのですが…。
また、今回のTV放送ではカットされましたが、Mr.Childrenが歌う主題歌は壮大すぎるし、感動を力ずくで押し上げてる感じがして嫌でした。
結構ボロクソに書いてしまいましたが、
映画終盤でこの作品に対して評価が上がりました。
この作品を通して描いた「死ぬ前に何を残すか」というメッセージ性も良いし、最後の手紙も良かったです。
「僕」に対しての思いが溢れてるし、「自分が死んでも好きな人の中で生き続けたい」という思いも「ありふれた言葉」で表現せずに告白を表現したのは秀逸です。
だから、この映画でやりたかった事も理解できるし感動出来た人も多いのも納得です。
ただ、途中の展開は何とかならなかったんですかね?
途中の嫌悪感を抱く部分が無ければ、自分だって絶対感動出来ただけに非常に残念です。
※念のため言いますが、「恋空」や「雪の華」みたいな病気ものの映画は嫌いな事はあるけど、自分でも好きな作品はあります。
韓国映画の「サニー」や、TVアニメの「四月は君の嘘」は凄く好きです。
確かに酷評することは多いですが、そこのところ誤解しないで頂きたいです。