「アブダビの免税店」オン・ザ・ミルキー・ロード 35leicaさんの映画レビュー(感想・評価)
アブダビの免税店
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戦争、結婚式、バルカン音楽、気狂い女、夜の嵐、水中撮影、アヒル、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ。いつもながらのクストリッツァのモチーフが繰り返され、待ってました!という気分。
ロバに跨り蝙蝠傘をさして肩にタカを乗せたクストリッツァ(本人)格好いい!
ミルクまみれになりながら草原を駆けてくるモニカベルッチかわいい!エロい!
今回、戦争描写が際立って凄まじく、特に多国籍軍の登場により、それまでチャップリンの「担へ銃」みたいにどこかほのぼのしていたセルビア軍の前線の村はあっさり壊滅、浄化され、美しい山間に黒煙が上がり全てが巨大な火炎放射器で完璧に焼き尽くされ、観るものを戦慄させます。
その後も桃源郷のような土地が次々と殺戮の焦土と化し、不条理感に体力を奪われながらも、監督独特のユーモアで前に進むことができるというかなんというか、戦災など大きな悲劇に見舞われると人は感覚が麻痺すると言いますが、クストリッツァの映画はまさにその麻痺の追体験。
不条理といえば2人の追われる理由が、そんな理由で?って内容なんですが、これもまた戦争の不条理を皮肉っているのでしょう。
ストーリーの大筋としては悲劇に次ぐ悲劇でしかない、のに悲憤慷慨とはならなくて、ワハー、クストリッツァ観た!という変な高揚感だけが残ります。最高。
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