「その「人生の物語」は、誰のものか」メッセージ かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
その「人生の物語」は、誰のものか
原題は『ARRIVAL(到来・到着の意味)』
原作は現代最高のSF作家テッド・チャン『あなたの人生の物語(Story of Your Life)』
監督に『ブレードランナー2049 』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。
【ストーリー】
ある日、世界各地に、宇宙船が到来する。
それらはすべて同型で、中には七本足の巨大な知的生命体が生息していた。
ヘプタポッドと名づけれた彼らは、宇宙船を出ようとはせず、待望の地球外知的生命体との接触にもかかわらず、人類はそこからなんら進展を得られないでいた。
言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、彼らとのコミュニケーションを確立すべく政府から要請を受け、現地におもむく。
軍隊がものものしく展開する中、ヘリを降りたルイーズに、おなじく調査によばれた物理学者イアン(ジェレミー・レナー)と合流し、ヘプタポッドとの対話を重ねてゆくが……。
なんでこの作品評を書くの忘れてたんだろう。
何回も見て、ほかの方の評価も読んでたので、とっくに書いたつもりになってました。
テッド・チャン好きとしてはありえないポカですね。
原作はハヤカワSF文庫の短編集『あなたの人生の物語』に収録された同名中編小説。
六本足の巨大な知的生命体との第五種接近遭遇(知的存在との対話)と、その解析にたずさわる言語学者ルイーズと、彼女をサポートする物理学者イアン、二人の人生が語られます。
途中にさしこまれる、いくつもの断片的なフラッシュバック(過去回想)&フラッシュフォワード(ストーリーが進行したあとの映像)、それらがラスト十数分でパズルを組みあげるようにつながる衝撃。
圧倒的アハ感。
「あ。あー、あーそうなのか……そうなのか!」
絵が完成した音が脳内でスコーン!
ってなります。
ただバラバラにされてるというだけではなく、物語の中核である「時間」をあつかう言語からティップス(断片)にされてるって強烈に考えぬかれた構成なんですよ。
ぐえー。
傑作だ……。
原作本もすごくて、他に収録された短編群いずれも好編、傑作ぞろい。
せっかくだから、原作者の紹介などを。
作者テッド・チャンは台湾系アメリカ人。
佳作で、本国アメリカでも中短編集がたった二冊しか出版されていません。
15歳から小説を書き、ずっと創作をつづけていましたが、才能が開花したのはクラリオン・ワークショップという創作合宿に参加してから。
アメリカにはこの手の創作小スクールがたくさんあって、そこからデビューした小説家のなかには、アル中治療のために作家活動するなんて変人(RAラファティとか)もいるとか。
クラリオン・ワークショップは六週間のプログラムなんですが、『いさましいちびのトースター』『いさましいちびのトースター火星にゆく』のトマス・ディッシュに見い出され、中編小説『バビロンの塔』を編集者に見せたのが、作家キャリアのはじまり。
というかどんだけいさましいちびのトースター書きたいんだトマス・ディッシュ。
二冊目うちにないよ。買わなきゃ。
ちなみにデビュー作となった『バビロンの塔』、『あなたの人生の物語』の冒頭に載ってます。
これが高評価をうけ、作家選出によるSF賞のネビュラ賞1991年中編小説部門を受賞。
日本ではSF大賞にあたる賞で、ネビュラ賞から名前をとった星雲賞は、読者投票でえらばれるヒューゴー賞にあたります。ややこしいよ!
この作品を見て言語学に興味をもたれた方は、ポッドキャストの『ゆる言語学ラジオ』あたりから、楽しんでみてはいかがでしょう。
脱線しまくりですね。
SFっていいよね!
ご清聴ありがとうございました。
「途中にさしこまれる、いくつもの断片的なフラッシュバック(過去回想)&フラッシュフォワード(ストーリーが進行したあとの映像)、それらがラスト十数分でパズルを組みあげるようにつながる衝撃。圧倒的アハ感。「あ。あー、あーそうなのか……そうなのか!」絵が完成した音が脳内でスコーン!
ってなります。ただバラバラにされてるというだけではなく、物語の中核である「時間」をあつかう言語からティップス(断片)にされてるって強烈に考えぬかれた構成なんですよ。」その通り!!拍手パチパチ。
かせさんの凄みのある素晴らしく的確な表現に、大感激です。
共感とコメントありがとうございます(^^)
原作があったんですね。ドゥニ・ヴィルヌーヴの『灼熱の魂』が凄まじかったので、同監督の別映画はどうなのかと思って見たのですが。テッド・チャンの原作、今度、探してみます。
> ファン同士の熱い議論に興奮です
ですよね〜。俺、二人のこのやりとり読んだ辺りから、とてもレビューが好きになりました。
> 脱線しまくりですね
脱線、ナイスです! かせさんがどれだけSFが好きか滲み出てます!最高です!!
かせさんさんへ
共感とコメント、ありがとうございます。
まだまだ、この作品への理解が出来ていないのかも知れません。
いつか、再鑑賞と共に原作本も読んでみたいものですね。