「名作だがSF慣れしてないと受け入れにくいかも」メッセージ こまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
名作だがSF慣れしてないと受け入れにくいかも
たまに見かける、異星人と地球人との心温まる交流的なものかと思いきや、
終盤からの流れは一気にヒューマンドラマになっていて予想外の展開。
そして大泣きしました。
でも難しい。これはSFに慣れてる人でないとキモのとこが意味わからない感じで、最後まで????と混乱したまま終わってしまうかもしれないとも思いました。
これ、地球人は3次元の世界で生きていて、異星人はそれより上の次元にいます。説明が難しいんですが、我々の通常の世界では時間は一方向へしか流れてませんが、4次元となるとドラえもんのようにタイムスリップできるわけです。
この映画の場合は過去へのは触れてないので、少なくとも異星人は3.5次元より上の世界にいる。そしてルイーズは(ある意味超能力)地球人だけども3.5次元を感知できる。それは異星人の言語を習得することによって身についてしまう能力です。自分でコントロールはできないけど、自分の未来も部分的に見えてしまっています。
彼女はそのことによって地球の危機を救うわけですが、同時に自分が未来にもうける家庭で、夫とは別れてしまうこと、一人娘は難病で早逝してしまうことを知ってしまいます。
意図的に自分の感情などと異なる行動をとっていかないと未来は変わらないのでしょう。
果たして、そうなった場合に、どういう選択をするのか。
この出会いの先に悲しいことがわかってるのに、それでもその道を選ぶのか?ということです。
ルイーズは将来悲しいことが待ってるとわかっていてもその道を選びます。
いずれ別れが来ることは自明の理ですが、今このとき感じる愛情を大切にしていこうと覚悟を決めるのです。
これは異星人なんか来なくたってすべての人に通じるものがあります。
いつか別れるだろうとわかってるからあの人は好きにならない、とかできるものでしょうか?子供なんかいらない、と割り切れるものでしょうか?
明日にも災害や事故で大切な人は亡くなってしまうかもしれません。
それでも我々は出会いを大切にしていくのでしょう。
そのことを教えてくれる、SFだけの枠に収まらない傑作でした。
そして言語が武器だ、というのは、映画の中では語られていませんが、勝手な解釈をすると。
まずキリスト教圏では世界で言語が違うのはバベルの塔にも語られるように罰則であり、互いの意思疎通を難しくするための神の意志です。これをヘプタポッドが全くの異世界から、国境に左右されない言語をもたらすわけですから、この言語を世界中の人が学ぶことによって戦争も無くなるかもしれない、という希望的観測があるのだと思います。ある意味地球上の混乱に対しての最強の武器というわけです。
西洋ならすぐピンとくるかもしれませんが、キリスト教圏でないとわかりにくい側面もあるように感じました。